『装苑』2009年08月号 New York
BONKUK KOO
BONKUK KOO
先日、知人に、デザイナーを目指す女性に絶対に会わせたい人がいると言われ、写真スタジオの一角を借りて週末の3日間開かれていたドレスの展示会に足を運んだ。オープニングのパーティには出席できなかったが、翌日のがらんとした会場でほかの訪問者を案内している一人の若い男性を見つけた。「ボンクク・クー」
----若きデザイナーの趣はまるで物静かな僧侶のような......というのが私の第一印象だ。針の1本、糸の一筋に至るまで丹精な気持ちを込めて彼の手で縫い上げられるドレスを目の前に息を飲んだ。「内面の美しさを大切にした、インターナショナルな女性に僕のドレスを着てもらえたらうれしい。クローゼットの中ではなく、実際の生活の中で袖を通されるドレスを作りたい」というボンククは、控えめに語りながらも明白に自分のやるべきことを熟知している様子だった。ディテールに凝った余分をそぎ落としたシンプルなドレスの美しさは雄弁に彼の思いを語っていた。一通りドレスを見終わると、自然に涙がこぼれた。後日、お礼のメールを出すと彼から返信がきた。「あなたは僕のドレスに涙を流してくれた世界で3人目の女性です」と。今年5月からアメリカ人で初めてパリのオートクチュール・コレクションに招かれたデザイナー、チャド・ラルフ・ルッチのもとでアトリエのアシスタントディレクターとして勤務するという。物静かなドレスメーカーの今後を見つめていきたい。
![]() |
text : Yasuko Soma
相馬康子●ニューヨーク在住ライター、ジャーナリスト。
ファッション、カルチャー、ライフスタイルを中心に執筆中。






