Who's Next What's Next: 2008年4月

『装苑』2008年6月号

マリー・アントワネットの人生を追体験 大回顧展開催
 
数々の伝説を生み、あらゆる分野の芸術家たちにインスピレーションを与えてきたフランス最後の王妃、マリー・アントワネット。彼女の足跡をたどるエキシビションが、その質の高いキュレーションで評価を得ているグラン・パレ美術館で開催されている。マリー・アントワネットの肖像画の数々はもちろんのこと、彼女がインクをたらして染みを作ったことが、その後の末路を暗示していたとされる有名な結婚宣誓書、当時の高級家具職人ジョルジュ・ジャコブによる華やかな応接セット、愛嬌あふれる顔だったことがわかるフェルゼン伯爵のポートレートなど、300点以上のゆかりある展示品は実に興味深いものばかり。首飾り事件(レプリカのネックレスも展示)からかげりが見え始め、牢獄のコンシェルジュリーを経てコンコルド広場で終わる彼女の人生を、当時の風刺版画や批判書などを交えて見せてもいる。史実とは異なり、かなり脚色されてはいるものの、池田理代子作の「ベルサイユのばら」、あるいは遠藤周作の「王妃マリー・アントワネット」で予習していくと、より興が増すに違いない。
『装苑』2008年6月号

繊維業者のソトーがハイテキスタイルの展示会を開催
 
パリでは去年から日本の繊維関係の展示会が頻繁に行なわれ、そのクオリティの高さが注目されつつある。そんな中、繊維業者のソトーが、よりラグジュアリーでハイテクな生地を厳選して、エスモードのパリ本校校舎内のホールで展示を行なった。デザインを手がけるのは梶原加奈子。イッセイ ミヤケのテキスタイル企画にかかわった後渡英し、2005年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)のテキスタイル科に学び、2007年にSOTOH HIGH TEXTILE COLLECTIONのクリエーティブデザイナーに就任している彼女は、自然、伝統工芸品や民族衣装などのモチーフをミックスしてモダンに見せる独特の手法を持つ。100以上の色を表現したジャカード地、マイクロファイバーで織り上げた極薄の化繊素材など、複雑な工程と高い技術を駆使した美しい布は、それだけで存在感があるものばかりだ。既に某ラグジュアリーブランドから受注済みとのこと。毎シーズン、パリで発表する方向にあり、ファッションの本場、パリでのこれからの広がりが期待される。
『装苑』2008年6月号

クリストフ・ブルンケルの悪夢的世界観
 
パープル・ファッションやフィガロ別冊ファッション特集号のアートディレクターとして、またロフィシェルにデッサンや写真を提供するアーティストとして注目されるクリストフ・ブルンケル。その彼が、以前から作品を発表してきた雑誌Nukeが運営するギャラリーNukeで個展を開催した。ZUCCaとのコラボレーションも記憶に新しい彼は、ファッション業界に知己が多く、オープニング当日はヴァネッサ・ブリューノ、コレットのアートディレクターであるサラ・レルフェル、コムーンなど、多くの業界人でにぎわった。エキシビションでは、自身のポートレートに手を加えた写真作品と、インクで描いたモノクロのデッサン画を展示。ダークでナイーブで、時にエロティック。しかし、どこかにユーモアを漂わせ、彼にしかない世界観を描き出している。すでに最新号のパープル・ファッションの別冊で特集され、現在発売中のNuke第6号にも作品を掲載。さらに次号のNukeでは別冊付録でフィーチャーされる。パリのアート界最注目のアーティストといえるだろう。
『装苑』2008年6月号

新進気鋭のネクタイデザイナー バルーク・シェムトフ
 
カラフルでポップ、若々しく斬新なネクタイのデザインが注目されるデザイナー、バルーク・シェムトフ。2002年、なんと16歳という若さで、マンハッタンの5番街にある高島屋のトップバイヤー、アンソニー・マンデルのおめがねにかない、扱われたネクタイはあっという間に完売、CNNやニューヨーク・タイムズなどのメディアでも取り上げられた。ネクタイをデザインするようになったきっかけは?「学校から家に帰った時、ブルーのバンダナを見つけてこれですてきなタイを作ってみようと思ったんだ。最初は5時間かけて細いネクタイを完成させ、翌日学校に締めていくと友達がみんな欲しがったんだよ」その後、"ダブル・タイ"という半分に切った上のタイを下のタイに縫いつけたユニークなデザインや日本のきものの生地を使ったものなど、クリエーティブなネクタイを発表し、おしゃれなニューヨ-カーの間で話題に。現在20歳の彼は、ボストンのハーバード大学に在学中で、勉強の合間にニューヨ-クとの間を行き来する日々。最近は女性用のサッシュのデザインも手がけるなど、ますます目が離せない存在だ。
 
http://www.baruchshemtov.com/
 
『装苑』2008年6月号

老舗眼鏡店「モスコット」の期間限定ポップアップショップ
 
1915年、マンハッタンのローワー・イーストサイドでハイマン・モスコットによって開業されて以来、4世代にわたり経営されてきた知る人ぞ知る眼鏡専門店「モスコット」。ルーズベルト大統領、トルーマン・カポーティ、アレン・ギンズバーグ、ウディ・アレンといったニューヨ-クを代表するアーティストや作家などのクリエーティブな人たちに愛され、最近では俳優ジョニー・デップのファッションのトレードマークになっているウェリントン型の黒ぶち眼鏡に、誰もが見覚えがあるのではないだろうか? そしてこの春、この「モスコット」の"ショップ・イン・ショップ"がミートマーケット・ディストリクトのデニムブティック「アン・アーネスト・カット&ソーン」に5月24日までの期間限定で登場。コラボレーションの限定商品、バッファローホーン(水牛の角)製の「LEMITOSH」が販売された。店のバックスペースに設営された仮設ショップはオリジナルの「モスコット」店舗へのオマージュがささげられたノスタルジックな異空間。眼鏡のレンズを通して、いにしえのオールドニューヨークに束の間のタイムトリップをしてみては?
 
「An Earnest Cut & Sewn」
821 Washington Street, New York, NY 10014 TEL212 242 3414
 
「MOSCOT」
118 Orchard Street, New York, NY 10002 TEL212 477 3976
『装苑』2008年6月号

"LOVE MOSCHINO"ブランド発表パーティ
 
2008-2009年秋冬コレクションから"モスキーノ・ジーンズ"がニューブランド"LOVE MOSCHINO(ラブ・モスキーノ)"として生まれ変わる。今までのジーンズスタイルがメインのコレクションから、モスキーノの元気なエッセンスいっぱいのライフスタイルコレクションにシフト。そのニューブランドの発表パーティが2月末、ミラノ・コレクション中に開催された。会場に一歩足を踏み入れるとそこは......春!春!春!屋外テントの天井には「WEAR IS LOVE」「LOVE MOSCHINO」の文字が浮かぶ澄み切った青空が投影されて、まるで春の戸外にいるような錯覚に。そしてその空の下には、ポップ&セクシーな新ブランドを着て、ひたすらイチャイチャしまくるカップルが数組。奥のメイン会場にも、ナンパの駆引きをする男女や、なぜか壁に縦に据え付けられたベッドの中でイチャつく老夫婦の姿が。椅子、テーブル、フードに至るまで赤いハート型。来場者にはハート型のブレスレットとリングのセット、ハートつきのタンバリンが配られて、なんだか気持ちが高揚してきたところに、ニューオリンズからやってきたダーティー・ダズン・ブラスバンドが入場して、盛上りは最高潮に。いつもはおすまししているジャーナリストやバイヤーもタンバリン片手にダンシングタイムを満喫し、モスキーノ・ワールドの魔法にかかったようだ。
『装苑』2008年6月号

愛着を持って使い込みたくなる
ナチュラル・タン・レザーのデザイングッズが集合!

 
ガリバルディ地区のコンセプトスペースasap(アサップ)で、ナチュラル・タン・レザー(植物から抽出したタンニンでなめした皮革)を使ったデザイングッズの企画展示販売「ナチュラル・タン・レザー展」が4月23日まで行なわれた。asapは「アズ・サスティナブル・アズ・ポッシブル」の略で、2001年のオープン以来、社会倫理の観点から環境意識とデザインやファッションを結ぶプロジェクト発表のスペースとなってきた。asapの母体である、プロダクトデザイナーや、ジャーナリスト、大学教授などで構成される若手人材支援のためのグループOPOS(オポス)が、デザインを募集しイタリア国内外から19作品を選び製品化。環境や肌にやさしく、自然循環型素材で、使い込むと味が出るナチュラル・タン・レザーの風合いを生かした製品は、ボロボロになるまで愛着を持って使い込みたくなる。テトラパック型小物入れ、スーパーのプラスチックバッグを模したバッグ、シャツのボタンに留めつける眼鏡ホルダーなど、遊び心あるデザイングッズがあふれた。
『装苑』2008年6月号

オリジナル・コラボレーション・クチュール
 
2007年、自身の名を冠する"クチュールコレクション"を発表したスコット・ウィルソン。学生時代からカール・ラガーフェルドとのコラボレーションなど、大きなメゾンに多くのアイディアを提供、最近では、フィリップ・リムとのコラボレーションも注目を集めている。彼にとってのコラボレーションとは常に「互いの創作に足し算・引き算しながらどう調和を生み出すかへの挑戦、同時に、思い描いているものと違うものを生み出すこと」だ。コラボレーションの哲学は自身のコレクションにも反映されていて、アール・デコ的要素を取り入れたモダンとクラシックの融合、セミプレシャスな素材の様々な組合せ方など、彼なりの新しい改革が見られる。「ジュエリーは服を生かしも殺しもする」と言うスコットが〝ハーモニー〟を深く追求している姿勢とその作品は、あなたのワードローブにはどう影響するのだろう?
『装苑』2008年6月号

コスメポーチに宿る、美のメッセージ
 
化粧ポーチ。この小さなものの大きな存在感を多くの女性が少なからず感じているはず。今回紹介するのは、イギリスのドラッグストア「BOOTS」がこの春提案するファンキーなピンク色のポーチ。ファッションシーンをもリードするイラストレーター、デイジー・ドゥ・ヴィルヌーヴとのコラボレーションで、エッジーでウィットに富んだデイジーのイラストレーションブック、『He Said She Said』や『I Told You So』からインスパイアされている。去年のデイジーとモエ・エ・シャンドンとのコラボレーションも記憶に新しいが、彼女は「ピンクはいつだってファッショナブルで、個人的には幸福感・愛・少女らしさを感じさせてくれる特別な色」と、色と感情の関係を表現。内側からの喜びが美へもつながるというのが彼女の美のモットーで、まさしく、化粧品そのものに依存するよりも、内からみなぎる自分らしさを存分に表現しようとする女性たちにエールを送っているかのようだ。
『装苑』2008年6月号

JAS M.B.と日本人デザイナーによる注目ブランド
 
一日の中に四季を感じさせる最近のイギリスの天気。おや?と思うこんな日常に見られる変化や我々と触れ合うものの関係性を服にたとえればどんなふうになるだろう。その形が見え隠れする新ブランドGOHjASは、英国在住日本人デザイナーのHirokazu Gohとバッグレーベルとして既に広く知られているJas M.B.のデザイナーJas Sehmbiによって2007年設立。「ゴージャス!」と感嘆する叫びをおかしくパロディにした名前で、2シーズン目のメンズと、初のレディスコレクションを発表し話題を呼んでいる。秋冬のメンズテーマは"Hotel"で、接触し合う客とスタッフの物語を表現。レディスでは"Warm Breez in Winter"をテーマに、秋冬に吹く冷たい風の流れに春夏の柔らかく包むような風の流れを融合させたイメージが表現されている。トレンドとなったエコ素材やそのスローガンに固執するというよりはむしろ、編みや織りにはみられないような新しい素材の開発やリサーチにも前向きだというGOHjAS。今後どう展開されていくのか、とても楽しみなブランドだ。
『装苑』2008年6月号

豪ブランド"Something Else"の展示会
 
今回紹介したいのはオーストラリアの注目デザイナー、ナタリー・ウッドのブランド"Something Else"がセレクトショップ「Bauhaus」で行なった展示会の模様。この展示会は1週間限定で行なわれ、ナタリーは2008年春夏コレクションのテーマ「天国を見失うこと」にそって、ポエティックで壮大な空間を作り上げた。ディスプレーもすべてナタリー自身が現場で作り上げたもので、店内を枯れ葉が舞い散る公園に見立てている。エレガントなドレッサーや家具などを巧みにオーストラリアの大自然の中に溶け込ませていて、古きよき時代を懐かしむようなディスプレーとナタリーが作る現代の洋服が共存した不思議な空間になっていた。環境保護をテーマにしたSomething Elseの洋服は、グリーンをキーカラーとし、家具の白、床に敷き詰められた紅葉のクリスマスカラーの中に、木を救いたいというデザイナーのメッセージを込めた印象的な展示会だった。
『装苑』2008年6月号

セレクトショップ「On Pedder」のアートマガジン
 
香港の有名な靴、バッグ、アクセサリー中心のセレクトショップOn Pedderがリリースしているアートな雑誌「Pedderzine」の最新刊が発売された。今回のテーマは「Super Natural」。人体や植物などの自然をモチーフにした背景に、On Pedderの2008年春夏のセレクトアイテムをミックスして、今までに見たことのないおもしろくて冒険的な雑誌を完成させた。フォトグラファーのClangは、ニューヨーク在住のシンガポール人。彼はコンセプチュアルな写真を撮るのが得意で、靴、ハンドバッグ、およびアクセサリーを風景に溶け込むようにセットして、現実にはありえないスケール感のイメージを作り出している。そして、デザイン事務所WorkのアートディレクターTheseus Chanによって、一見ファッションとは結びつかないリアルな人体や植物のイメージが、商品と美しく融合しており、新しいビジュアルを作るのに成功している。
『装苑』2008年6月号

現代アートとディスプレーの交差点
 
香港のアート団体Para/Site Art Spaceは、現代の彫刻作品と作品の展示空間との間のあいまいな境界線に着目した「DIS PLAY」という展覧会を開催した。この展覧会では香港の3人のアーティスト、ナディム・アッバス、ジョナサン・ルン・ホイ・ヤット、エイドリアン・ウォンをフィーチャー。展示は3人の彫刻作品を異なったインスタレーションで見せている。エイドリアン・ウォンの作品「Happy Birthday」(写真上)では、1960年代から'70年代の雰囲気を再現したセットの上で子供のお誕生日会をお祝いすると、モニター画面にライブでその映像が流れるというもの。この作品はウォン自身の記憶から発想されている。そして、ジョナサン・ルン・ホイ・ヤットの作品「Controlspace International Number 2」(写真中,下)は、彼が学校から受け取った手紙に印刷されていたバーコードをコンセプトに利用している。彼の名前やアドレスなどの個人情報を登録したバーコードは、別の個人と彼を区別する唯一のサインになる。 そして、平面のバーコードを展示スペースの中で立体化し、通行を難しくする混沌の迷路に変えた、大胆な発想のインスタレーションだった。
 
http://www.para-site.org.hk/
『装苑』2008年5月号

世界に誇る繊維技術 丹後テキスタイル展
 
1300年の歴史を持つ丹後の繊維産業。Japan Brandとして丹後地方をベースにする8社に、J-texとして幅広いビジネス展開をする繊維会社3社が加わり、日本古来の伝統的な技法、あるいは最近編み出された最新技術を世界に知らしめるべく「伝統と革新」というテーマで2月に合同展示会を行なった。今回の会場はパリ中心のホテル、セント・ジェームズ・アンド・アルバニーのサロン。オープニング当日はジャンポール・ゴルチエのテキスタイル担当者や、クチュリエールのアデリーヌ・アンドレらが来場。フランスにおける日本繊維への関心の高さを垣間見せた。特に目を引いたのが、薄い貝殻を貼りつけた和紙をカットし、糸を通して布にする螺鈿の技術を用いた布。また野生の藤の木の皮をつなげて糸にするという、現代まで忘れられていた日本古来の技法を使った布も登場。そんな特別な布を使った服がパリコレに登場する日は近いかもしれない。
『装苑』2008年5月号

エスパス・ルイ・ヴィトンの「国境なき東洋」展
 
世界におけるモダンアート第2の都市であるパリでも、東洋への視線が年々熱くなっている。そんな中で、また一つ興味深い展覧会が始まった。ルイ・ヴィトン本店の最上階に設けられているギャラリースペース、エスパス・ルイ・ヴィトンで行なわれている「Orients Sans Front ières(国境なき東洋)」展だ。これは1931年に敢行されたアンドレ・シトロエンによる伝説的な中央アジア横断旅行にインスパイアされたもの。今までアートの存在を知られず、スポットが当たってこなかった国、例えばイランやイラク、パキスタンやアフガニスタンなどのアーティストたちの作品を展示している。それぞれの国の事情を反映した作品が多く、また女性アーティストたちが多く選ばれているところも新鮮。もちろん最注目の中国人アーティスト作品も展示され、本国におけるモダンアートの成熟度の速さを確認できる内容になっている。
『装苑』2008年5月号

ジャンポール・ノット、パリコレに復帰
 
去年チェルッティのデザイナーに就任したジャンポール・ノットが、久々にパリコレの表舞台に帰ってきた。これは日本のトゥモローランドのオリジナルブランド、ギャルリー・ヴィーとのコラボレーションで、日本ではすでに2006年春夏から展開しているもの。コレクションは今年1月末のオートクチュール期間中に発表され、会場となったコンサートホール「サル・ガボー」には入りきらないほどの人々が駆けつけ、ノットの根強い人気をうかがわせた。風に揺れるような繊細な素材をシンプルなフォルムで形作り、きものの生地を使いながらも過度なジャポニズムにせず、ノットらしい洗練された優美な世界を見せている。クチュール期間中にプレタポルテを発表するのは異例のことだったが、今後世界各国でどのように展開していくのか気になるところだ。
『装苑』2008年5月号

グラフィックアーティストとテキスタイル
 
話題性の高いファッションデザイナーとテキスタイル制作のコラボレーションを重ねるグラフィックアーティスト、クラウス・ヨーガン・シュミット。2007年秋、スイス・テキスタイルアワードを獲得したマリオス・ショワブ、ニットデザイナーのルイーズ・ゴールディンや、リバイバルブランドBIBAなどにおいて、クラウスの提供するグラフィックのテキスタイルがコレクションのスパイスとなっている。自身の強いスタイルを確立するというよりも「テキスタイルが編集されたイメージとして生まれ変わるよう、長い時間を費やしてでき上がった作品が、キャットウォークで一瞬の間に紹介されることはすばらしい。ものや概念が必要以上に評価されないですむという点で、次への意識を明瞭にして前に進めるから」と言う彼は、「デザインする」ことを刹那的にとらえるのとは違い、新しい可能性の発見、ぶつかり合うものや矛盾への挑戦、固執しない姿勢などの課題を深くデザインにも反映している。また、プリントやニットに限らずこれからは刺繍の分野などにも興味があるというから、更に注目していきたい。
『装苑』2008年5月号

3人トリオのチョコレートマジック
 
チョコレートが宝石に見えるとしたら、もったいなくて口にできない!と感じるより勢いよくほおばってみたいものだ。新しいコンセプトのチョコレート屋さんCOCOMAYAは、西ロンドンのコンノートストリートに位置し、"眠らぬ道"といわれるエッジウェアーロードからちょっと入ったところとは思えないほど閑静な場所に位置。ファッションにおいてもライフスタイルにおいても普通の感性の持ち主じゃないブレーンたちが"文殊の知恵"でもってディレクションしたショップだ。高級デパート、リバティでコンセプトチームのリーダーだったJoel Bernstein、Reemともコラボレーションを重ねてきたアクセサリーデザイナー、Warid Al Damirji、英国におけるフードブティックの先駆け的存在、Baker & Spiceを創設したGail Mejia。こんな実力ある3人が手がけていることでも注目を集めている。さらに、ここではガラスで仕切られた隣接部屋でジュエリーチョコを作っている職人のクラフツマンシップぶりも眺めることもできるので、トリオによる宝石箱COCOMAYAを心ゆくまで堪能してほしい。
『装苑』2008年5月号

ロンドン発・Made in Whitechapel
 
注目ファッションレーベル"Aganovich"のデザイナー、ナナ・アガノヴィッチはベルグラード出身、デンマーク育ち、ロンドン仕込みの女性。そして、クリエーティブ界の異端児ともいえるアートディレクター、ブルック・テイラーは、もともとPurple、Colors、Little Moreなど、世界各国の雑誌で活躍してきた人で、コレクションの演出家でもある。特に歴史的な出来事にウィットをきかせていることで話題を呼び、作家Peter Ackroydの小説からインスパイアされたテーマ"The Dream of Beef"や、1929年のアル・カポネ殺害事件からとった"The St.Valentine's Day Massacre"など、文学的かつセクシーで強い"戦士のような女性像"がシリーズになっている。2007年に新しくスタートしたこのレーベルは、彼らがスタジオを構える歴史的な街、東ロンドンのホワイトチャペルから発信するというこだわりも持つ。国際人だからこそ"現在のアイデンティティ"を大切にし、主張する、彼らのメッセージと洋服にこれからも注目したい。
『装苑』2008年5月号

ルネッサンスのお城にハイヒールがズラリ。 靴とスターの関係は?
 
イタリアでも屈指の靴産地ヴィジェーヴァノで「IL Tacco a Spillo(ハイヒール)展」が5月25日まで開催中。ルネッサンス時代のお城を会場に、約100足余りのハイヒールが展示されている。展示は2部に分かれ、第1部は1950年代〜60年代、ハイヒールが生まれ、映画や音楽界に広まっていった時代がテーマ。"サルヴァトーレ・フェラガモ"がマリリン・モンローのために作り、モンローウォークを生み出したハイヒールもある。ローマのチネチッタの女優たちに愛された、靴のアトリエ"コー"や、フランスの"ロジェ・ヴィヴィエ"など、当時のエレガントなハイヒールが、ブリジッド・バルドーやソフィア・ローレンなど往年の女優たちの写真とともに並ぶ。第2部は1980年代から未来がテーマ。TVドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」に登場する"マノロ・ブラニク"、デヴィッド・リンチの写真展「ポートレート・フェティッシュ」に使われた"クリスチャン・ルブタン"など有名ブランドのハイヒールのほか、新進注目ブランド"コートニー・クロフォード"、"アマテラス"などの作品も並ぶ。伊ピレッリ社の広告キャンペーンの、ハイヒールをはいたカール・ルイスの写真、伊パノラマ誌でハイヒールだけを身につけたヌードを披露したカーラ・ブルーニの写真は時節柄(?)必見だ。
『装苑』2008年5月号

リチャード・アヴェドン写真展
「Richard Avedon-Fotografie 1946-2004」開催

 
米国人フォトグラファー、リチャード・アヴェドン(1923-2004)の写真展がミラノの国際写真センター・フォルマで開催されている。第二次大戦後の1946年に、ローマやシチリアで撮影した初期のドキュメンタリー作品から、ベルリンの壁崩壊から2か月後の1989年元旦のブランデンブルグ門のルポ作品、最後の作品となったビョークのポートレートなど、計250点を展示。ファッションからポートレート、ルポと大活躍した20世紀の巨匠の仕事が集大成されている。 ミラノの後、同展はパリ、ベルリン、アムステルダム、サンフランシスコを巡回する。 同展のカタログ(65ユーロ)は、コントラスト出版から発売されている。
『装苑』2008年5月号

不思議な昆虫バッグ----
リサ・ファーマーのアートバッグプロジェクト

 
米国出身のデザイナー、リサ・ファーマーが手がけるアートバッグのプロジェクト"Neither fish,flesh,fowl nor good red herring"。金魚や昆虫をモチーフにしたレザー製の不思議なバッグは、一つ一つがハンドメードの一点物。リサは1996年のアトランタ・オリンピックのグラフィックの仕事を皮切りに、米国、英国、イタリアなどで、グラフィックデザインやブランド・アイデンティティ企画の仕事に10年間かかわってきた。その間ロンドンのセント・マーティンズやミラノのIEDなどで教鞭をとった経験もある。しかし、昨年リサは重大な方向転換をする。「今までマーケットやクライアントに左右される仕事に携わってきたので、今度は自由にクリエーションを発揮したい!」と、このプロジェクトを実現した。材料となるレザーはナッパ。その手触りや、フォルムのディテールにこだわった。表面のデコレーションもそれぞれ微妙に異なるので、世界でただ一つしか存在しない作品で、一点物であるという証明書がついている。現在、米国とイタリアのアートギャラリーで展示販売されている。
『装苑』2008年5月号

"フューチャークラフト"発、新世代のクラフトファッション
 
弱冠22歳のデザイナー、ジェナ・リヴァースが発信する美しい手織りのファッションブランド"FUTURECRAFT"は親子3代のファミリービジネスプロジェクト。スカーフ、帽子、ジャケット、アクセサリーなど、伝統的なハンドクラフトの技とジェナの瑞々しい感性、そしてモダンテクノロジーが融合した精巧なテキスタイルによる、モノクロームの世界が美しい。"FUTURECRAFT"は、ビクーナやアルパカのホームスパンを身にまとい、大学でテキスタイルの教授をしていた祖母のマリア、その技と審美眼を受け次いだテキスタイルデザイナーの母・ジョセフィーヌ、そしてニューヨークのFITでファッションを学び、受け継がれてきた伝統に現代感覚をミックスし結晶させた孫のジェナによって、アルゼンチンのクラフツマンシップを新時代に息づかせた。白と黒が織りなす繊細な模様のハーモニーが、時を超えて現代のスタイルによみがえった。
『装苑』2008年5月号

"ルル・フロスト"の新「イニシャルライン」登場
 
ニューヨークの老舗ホテル「プラザホテル」のルームナンバーの原型を使用したペンダントヘッドのネックレスで注目され、本誌でも取り上げたジュエリ-ブランド"ルル・フロス"。その新バージョンとして、プラザホテルで使用されていたアルファベットの文字を用いたネックレスがバーニーズ ニューヨ-クの限定商品として販売されることになった。オリジナルの文字はドアから外された"W・O・M・E・N"と"M・E・N"そして"B・A・T・H"のイニシャルで、今回は新たに型を起こしたAからZまでのイニシャルも登場する。ペンダントヘッドはブロンズ製、ビンテージのブラス製チェーンに1粒の淡水パールをあしらったデザイン。「自分にとってよりパーソナルな意味合いのイニシャルをラッキーチャームとして楽しんで!」とリサからのメッセージが届いた。
『装苑』2008年5月号

コンセプトショップ「デン」
 
イーストヴィレッジで人気のメンズブティック「ODIN(オーディン)」が店の隣に立ち上げたコンセプトショップ「DEN(デン)」。6〜8週間を周期として、世界の新進デザイナーをフィーチャーし、店の内装デザインもそのたびに様変り。これまでティム・ハミルトン、チープマンデイなどを取り上げ、3月中はニュージーランドのデザイナー、カレン・ウォーカーをフィーチャー、店が丸ごとファンタジックな彼女の色に染められている。デザイナーにとってマンハッタンで自分の世界を表現できるブティックを持つことはとても重要なこと。この空間は、そんな彼らにとっての夢のシミュレーションスポットとしてすばらしい機会を与えている。ダウンタウンのファッションフリークたちのマストチェック・スポットだ。
『装苑』2008年5月号

中国の新世代アーティスト "趙剛"
 
趙剛(Zhao Gang)は、中国生れ、現在はニューヨーク在住のアーティスト。趙剛の作品は、中国の文化を意識しつつも破壊的なイメージを作り、新しいメッセージを強力な色で表現しており、中国が持っているノスタルジーと新しい世代とのバランスをとって、歴史的なアイコンを再構築している。さらに趙剛の絵の魅力になっているのは、素直に自分の思いをキャンバスにぶつけるスタイル。西洋の現代美術の手法を用いつつも、中国的なモチーフを多用し、言葉では説明できない自由を生み出している。今年1月にも、香港のギャラリーHanart TZ Galleryとアートセンターとの協力で個展を開催するなど精力的に活動している。個展では人間性の自由と解放をテーマにした作品を発表し、アートと日常の関連性を感じることができるような展示空間となっていた。
『装苑』2008年5月号

香港の国際ポスタートリエンナーレの展覧会
 
今回紹介するのは、香港設計師協会が主催する「香港国際ポスタートリエンナーレ2007」の受賞作品。このコンクールは、ポスターデザインを通じて香港と国際間の文化とデザイン交流を促進する目的で開かれている。今回は、香港をはじめ46か国から737人のデザイナー、2253の作品がエントリー。世界各国から参加したデザイナーたちは、それぞれに持っている独自の文化をポスターデザインの表現に反映しており、おもしろくて、楽しい作品が集まった。現在、これらの中から6人の国際審査員が選んだ受賞作品を含め、249のポスターを集めて香港文化博物館で展示中。審査員と受賞者によるセミナーも行なわれるなど、お互いの考えや発想、デザインの経験、感想を皆でシェアし、充実した展覧会となった。
『装苑』2008年5月号

シャネル×ザハ・ハディッドの移動式美術館
 
香港で近ごろ最もホットなイベントは、シャネルによる世界巡回の展覧会「Mobile Art : Chanel Contemporary Art Container by Zaha Hadid」。このアートイベントは、カリスマ的存在の建築家ザハ・ハディッドによる移動式美術館の建物が話題。このフューチャリスティックな建物のフォルムは、貝殻の螺旋状の形からインスピレーションを得て作り上げたものだそう。この展覧会には、世界中のアーティストたちが参加し、シャネルの有名なキルティングバッグをイメージした作品を発表した。ダニエル・ビュレンをはじめ、ファブリス・イベール、イ・ブル、マイケル・リン、荒木経惟などのトップアーティストによる現代アート作品が展示されている。また、観客にMP3プレーヤーが渡され、各アーティストが用意したオリジナル音源とともにアートを楽しむことができるなど、新しい試みも行なわれている。香港での展示を終えた後は、5月31日より東京にて、その後ニューヨーク、ロンドン、モスクワ、パリなど世界の都市を2010年まで巡回する予定。

 
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