2014 S/S TOKYO COLLECTIONS

聡明な日本人。 28 NOV. 2013

TEXT MARIKO NISHITANI

 10月14日から19日まで行われた、メルセデス・ベンツファッション・ウィーク東京を挟んで、発表の早いブランドは9月に、遅いブランドは11月に入ってから、東京コレクションは約2ヶ月のスパンで開催された。
メディアで取り上げられるのは、どうしてもファッションショーの形式で発表するブランドが中心になるが、一方で展示会のみで発表するブランドが、しっかり力をつけてきているのも、ここ数年の東京の特徴と言える。注目されるブランドほど、独自にフォトシューティングを行ったり、ムービーを制作したりして、イメージ作りに注力している。ジャーナリストやバイヤーは、展示会においても、単純に服をチェックするだけでなく、コレクションの背景にあるデザイナーの世界観を読み取らないわけにはいかなくなってきた。
その分、肝心のファッションウィークが求心力を失っているのは否めない。東京は、今やファッションウィークに世界のジャーナリストが駆けつけ、その動向やトレンドに目を凝らす、という1980年代末から'90年代初めにあったポジションではもはやない。日本を代表するブランドは力を蓄えるとパリやニューヨークに発表の場を移していき、新しいスターもなかなか生まれにくい状況にある。だが、一つ一つのブランドを覗くと、そこには確かな進化はある。それを丁寧にすくい上げ、「TOKYO」というパズルを完成させることが、ジャーナリズムの使命だろう。

 今回のコレクションを通して感じたことは、それぞれのラグジュリー=贅沢さの探求である。一時期、東京コレクションのそこかしこで見られたポップでカワイイファッションは、購買層の年齢が上がったことによるのか、もはや姿を消し、代わって、素材の高級化が目についた。デザインは比較的オーソドックスからクラシックに近いものでまとめ、その分、素材のクオリティを上げ、かつオリジナリティを盛り込む。
これまでに使ったことのない手法で素材を作り、華やかで色鮮やかなコレクションを展開したミントデザインズ、一見クラシカルだが、素材の実験が随所に隠されているビューティフル ピープル、独自の素材を作るために産地を回り、交渉を重ねて、新しい贅沢さを実現させたマメ、「少年が大人になった」という説明で、これまでのミニマルで色も抑えたコレクションから一躍華やかな変貌を果たしたシセ、カジュアルなデザインは変えずに、素材や質感のランクを上げることで独自のラグジュリーを追求したアンユーズド。手法はそれぞれに異なるが、共通するのは、日本人が求めるラグジュリーというのは、決して欧米のようなパーティ仕様のこれみよがしの豪華さではなく、日常を贅沢にしようという気概である。
たまたま手にした雑誌『ブルータス』の小津安二郎特集で見つけ、「贅沢と無駄使いは違う」という小津の言葉。贅沢とは自分の心の栄養になるお金の使い方......安いものをたくさん買うことで、日本人は、何かを失いかけているのかもしれない。

2014 S/S TOKYO COLLECTIONS

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 もう一つ、印象的だったのは「和」の独創的な引用である。ショーの形で大きく和をアピールしたのは、ソマルタだ。もともと日本の美術や建築に関心はあったものの、ファッションに取り入れるのは難しいと敬遠してきたが、リサーチの末、着物の持つ機能性や抽象性に着目し、繊細でかつフューチャリスティックなコレクションに仕上げた。初めてのファッションウィーク参加で、ユニークなショーを見せた刺繍アーティスト、有本ゆみこが手掛けるシナの和風の解釈も優れていた。観客がハーフミラーの袋をかぶって鑑賞する中、中央の台の上にモデルが立つという奇想天外の舞台作りだったが、そこで発表された16点のすべて1点もののドレスは、古布をリメークしたもの。日本のボロや帯地が、まるで夢のように生まれ変わる様子は、和の明るい未来を予見させた。
コレクションに先立ってパルコミュージアムでの「絶命展」で発表されたリトゥンアフターワーズのショーに織姫と子どもたちの衣装として登場した、野良着のようなボロ=古布ときれいな色のフェルトがニードルパンチでドッキングされた素材は、情感と意外な新しさを感じさせた。
案外こういうところに、日本が海外にアピールする突破口はあるのかもしれない。シナとリトゥンアフターワーズは、既製服を作っているわけではないが、ファッションの想像力はまだまだ広がって行きそうだし、東京の未来を悲観する必要は全くないと感じさせてくれた。
最後になってしまったが、SIZEをテーマに、ダイヤルを回してサイズの変わる服を提案したアンリアレイジの東京的ユニークな創作力が、独走態勢で東京コレクションの一翼を担っていたことも忘れてはいけない。

2014 S/S TOKYO COLLECTIONS

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上段は、目黒区のギャラリーで行われたシナのコレクション。新しい和の表現が印象的だった。下段は、東京・渋谷のパルコミュージアムでのリトゥンアフターワーズのショー。演出は安藤桃子。安藤さくらが織姫に扮した。

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