2013-'14 A/W TOKYO COLLECTIONS

迷走する「女性像」の今とこれから。 5 SEP. 2013

TEXT MARIKO NISHITANI

 ファッション批評家の平川武治さんは、モードについて論じる際によく「女性像」という言葉を使う。その時代に求められている女性像を的確に打ち出せたかどうかが、コレクション成否の決め手になるというもので、過去を振り返ってみても、時代を変えたデザイナーは、イヴ・サンローランにしても、川久保玲(コム デ ギャルソン)にしても、マルタン・マルジェラにしても、それぞれに、新しい女性像を打ち出してきた。しかし、2000年代以降、際立った女性像は提案されていないと、昨年あるトークイベントでも話し、納得したものだ。確かに、コレクションのテーマを語るとき、「女性像」という表現は毎度のように登場するが、今や実体のないものになっているように思える。今シーズンの東京コレクションを思い返しながら、この平川さんの言葉が蘇ってきた。

 前シーズンあたりから、東京コレクションの中に変化を感じている。それは、単純化して言うと、全体的に大人っぽくなってきたということなのだが、ミントデザインズのデザイナー八木奈央さんにそう言うと、即座に「大人っぽいとか、子どもっぽいとかという言い方自体、変だと思います。少なくともイギリスでは、そういう表現はないですね。成熟したとかストリートカジュアルとかという言いかたはありますが。カラフルだと子どもっぽいとか、どうも安直にカテゴライズされている気がします。ミントデザインズの顧客でも、色や柄を素敵に着こなしている大人のかたはたくさんいらっしゃいます」と、黒を多用した前シーズンに対して「大人っぽくなった」というメディアの評に違和感を感じていることを明らかにした。
それでも、「大人っぽい」にこだわってみたい。私の感じる「大人っぽさ」には、色彩が落ち着いていること、フリルやレースなどの装飾が少ないこと、全体にデザインが削ぎ落とされていることなどが要素としてある。1年前、マメのデザイナー黒河内真衣子さんにインタビューしたとき、自分が5年後、10年後に着たい服を作っていきたいと語ったこととも繋がる。ちなみに、今シーズンの中で「大人っぽくなった」と私が感じたのは、ミントデザインズ、シアタープロダクツ、ファーファー、ファセッタズム、G.V.G.V.、ソマルタ、ミヤオ、ビューティフルピープルなど。デザイナーが中西妙香から藤原美和に交代したシアタープロダクツは、無地を多用して、デザインもシャープになった結果、大人っぽい印象に。ファーファーは、ほとんど黒だけのストーリーを組み立てたことで、一気に大人っぽくなった。ファセッタズムはスタイリングで見せるやりかたは踏襲しながらも、カーキとブルーの配色がシックで大人っぽい。ビューティフルピープルは、故イヴ・サンローランへの尊敬の気持ちを洋服で表現。ダブルのスーツやトレンチコートなど、エレガントな作品がそろった。

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 改めて「大人っぽさ」の中身を考察すると、以下の3つというになるのだろうか。

1. 色彩がダーク、もしくは寒色中心で、知的で落ち着いた印象にまとめられている。
2. デザインが、実験的、装飾的な要素を減らし、ミニマルである。
3. 素材に高級感がある。

これまでも、そういう意味でいうと、大人っぽかったし、今回もその路線を取ったのは、サポートサーフェス、タロウホリウチ、まとふ、ヤストシ エズミ、マメ、エーディグリー・ファーレンハイト、サチオカワサキ、レプ ラスなど。かつてグリーンのデザイナーだった吉原秀明と大出由紀子が新たに始動したハイクも、同様のカテゴリーに入ると思われる。

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 なぜ、改めて「大人っぽさ」に言及したかと言うと、日本では、'90年代のガーリーブームにせよ、東京・原宿のストリートファッションにせよ、常にティーンから20歳代前半の若者をターゲットにファッションカルチャーを作ってきたところがあるからである。学生か自由業か業界人こそがファッションの主役という立場を取り、ポップでアバンギャルドで自由なファッションを肯定し、ファッションを若者限定のものとして広告もビジネスも動いてきたのが、リーマンショックや3.11以降、事情は変わってしまった。
ガーリー、ガーリッシュ、カワイイなどの形容で語られてきた、若者に響くファッションは、より広いターゲットを獲得するために、変化を余儀なくされている。その結果、ガーリーでもカワイイでもない、若年層向けではないファッションが、名づけられないままに登場し、それはまだ「女性像」のイメージを結べずにいるのではないだろうか。上記のサポートサーフェス以下のブランドの多くが、海外を経験してきたことも、ミントデザインズの発言と合わせて考えると示唆的だ。

 「女の子たちの関心は、服からバッグやアクセサリーなどの小物、あるいはコスメやエステや旅行などへと移りつつある」と数年前に指摘したのは、当時イッセイ ミヤケのデザイナーだった滝沢直己さんだが、今は、これを補足するように、服への関心が強いメンズファッションにむしろイメージの大きな変化が指摘できるかもしれない。

 2012-'13秋冬シーズンのコム デ ギャルソン・オム プリュスで、メンズモデルがそのままレディスコレクションとも受け取れる服を着て登場したことは、鮮烈な記憶として残っているが、今シーズンの東京でも、ミキオサカベ、ドレスドアンドレスド、ハトラが、性的な記号を消すという明快なコンセプトでコレクションを発表した。特にミキオサカベは、男性の女装というジャンルに切り込んで話題を呼んでいるが、ほか2つは、ブランドのコンセプトとして両性が同じ服を着ることを出発点に、パターンを微調整することで、男っぽくも女っぽくもない造形を作っているところが特徴だ。メンズの人気ブランドであるホワイトマウンテニアリングも、次シーズンからは、これまでのレディスラインのポーラルとは異なり、同じホワイトマウンテニアリングとして女物を考えていくと言う。

 こういう流れの中で、そろそろ新しい日本独自の女性像が生まれるのではと、1ヶ月後に控えた2014春夏東京コレクションでの展開を心密かに楽しみにしている。

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01、02 ミキオサカベ 03 ドレスドアンドレスド 04 ハトラ



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