2014 S/S PARIS COLLECTIONS

新時代の個性を模索。 29 NOV. 2013

TEXT MARIKO MITO(B.P.B. PARIS)

 9月24日から10月2日まで、パリ・コレクションが開催された。9日間の公式スケジュールは、これまでにも増し過密になり、参加したメゾン数は99。多い日では1日に12メゾンが新作を発表した。

 そんな中、ショー会場の移動手段として、セーヌ川を運行する船「バトビュス(Batobus)」を利用した初のサービスが行われた。通常どおりのシャトルバスと併用され、限られた日の一定区間のみの実施だったが、穏やかな気候に恵まれ、利用者はしばしのクルーズ気分を楽しんだ。コレクションを運営する協会は、スケジュールが順調に遂行され、ジャーナリストがスムーズに取材できるよう、さまざまな働きかけを行っている。パリの中心を流れるセーヌ川近くでのショーの開催もその一つであり、賛同するメゾンが増えれば、このサービスも定着していくことだろう。

2014 S/S PARIS COLLECTIONS2014 S/S PARIS COLLECTIONS
左は、セーヌ川のクルーズ船「バトビュス」。右は、ニナ リッチの会場に向かって移動中の風景。

 今シーズン、話題の中心になったのは、ルイ・ヴィトンを牽引してきたマーク・ジェイコブスの退任である。ファッションウィーク中に噂は広がっていたが、最終日に行われたショー当日まで公表は控えられていた。コレクションは、メリーゴーランド、噴水、エスカレーター、エレベーターなどの舞台セットが、過去のショーを回想させ、16年間に渡り、観客にさまざまな感動を与えてきたジェイコブスの集大成と言える仕上がりだった。ランウェーには、豪華な装飾の黒の装いが並び、ボトムにはジーンズが合わせられている。ミステリアスな雰囲気にストリートが融合したモダンな女性像である。今後、ジェイコブスは、自身のブランドに専念するという。一方ルイ・ヴィトンは、ニコラ・ゲスキエールをアーティスティックディレクターに任命したことを11月4日に発表。最初のコレクションは、来年3月にお披露目される予定。またロエベは、スチュアート・ヴィヴァースが退任し、J.W. アンダーソンを手掛けるジョナサン・ウィリアム・アンダーソンが後任に。この交代により、今回のショーは休止された。ちなみにヴィヴァースは、コーチのエクゼクティブクリエーティブディレクターに就任している。

2014 S/S PARIS COLLECTIONS2014 S/S PARIS COLLECTIONS2014 S/S PARIS COLLECTIONS
上段は、ルイ・ヴィトンのショーの会場。下段左は、フィナーレに登場したマーク・ジェイコブス。右は、ジェイコブスの後任としてアーティスティックディレクターに就任したニコラ・ゲスキエール。ゲスキエールが手掛ける初のコレクションは、2014年3月にパリで発表される予定。photo : Karim Sadli

 11月に発表されたアン・ドゥムルメステールの突然の辞任も衝撃的だった。1999年にパリ・コレクションに初参加し、以来、第一線で走り続けてきた彼女は直筆の手紙に「アン ドゥムルメステールは、今やアイデンティティと受け継ぐものを持つ成熟したブランドになりました。私がいなくても成長し続けていくことができます」と綴っている。自身の今後の活動については、明確には語られていない。

2014 S/S PARIS COLLECTIONS2014 S/S PARIS COLLECTIONS2014 S/S PARIS COLLECTIONS2014 S/S PARIS COLLECTIONS
写真は、アン ドゥムルメステールの2014春夏コレクション。

 ニューカマーの話題も尽きない。初日に登場したクリスティーヌ・ピュングは、今年のANDAMでプルミエール・コレクション賞を受賞。IFMを卒業後、クリストフ・ルメール、クロエ、ヴァネッサブリューノなどで働いた経験を持つ期待のデザイナーである。パコ ラバンヌのクリエーティブディレクターに就任したジュリアン・ドセナも注目の新人。ブリュッセルのラ・カンブル校出身、イエール国際フェスティバルのファイナリストになり、2008年から'12年まで、ニコラ・ゲスキエールの下で、バレンシアガのシニアデザイナーを務めていた。今回は、公式スケジュールの日程が合わず、オフスケジュールでショーを発表。この他、オートクチュールの招待会員であるイリッシュ・ヴァン・ハーペン、ロンドン・ベースのヤン・リが初の公式参加を果たしている。

 トレンドはというと、ダイナミックな柄やパワフルな色を打ち出すメゾンが増え、景気の低迷と共に保守的になっていた空気を打ち破るかのような、活力に溢れるコレクションが多かった。強い女性像は、時にはセクシーに、時にはユーモラスに描かれ、新しい個性を模索する意思が感じられた。

 カラーパレットは、原色や蛍光色の鮮やかな色が目立ち、春夏だが黒の存在も大きい。特に重要だったのはマテリアルで、キラキラと光る生地が豊富に使われ、豪華さとファンタジーを作品に与えていた。また、プリーツの多様性もポイントの1つ。アコーディオン・タイプやクラッシュしたプリーツなど、種類はさまざまで、部分的に切り替えたり、造形的に装飾したりと、使いかたもバリエーションに富む。ハイテク素材の追求は尽きず、ハンドクラフトによる凝った生地も多数見られた。

 ランバンは、「シャイン(輝く)」をテーマに世界中から光沢感のあるマテリアルを集め、眩く優美なコレクションを披露。中でも、スーパーライトなプリーツ素材が華やかさを引き立てていた。サンローランは、メゾンのアーカイブから得たモチーフを取り入れつつ、きらびやかな装飾とミニ丈のドレスによるグラムールなスタイルである。メゾン マルタン マルジェラは、1950年代のサーカスの衣装を再解釈した作品で、スパングルやラインストーン刺繍のロマンチックな世界観とメンズのテーラリングをミックス。ハイダー アッカーマンは、メタリックレザーのマニッシュなジャケットやスキニーパンツに、プリーツのドレスをコーディネートし、フェミニンさを演出した。ドリス ヴァン ノッテンのキーカラーのゴールド、プリーツの布で作った大輪の花のような装飾も印象深い。

2014 S/S PARIS COLLECTIONS
2014 S/S PARIS COLLECTIONS2014 S/S PARIS COLLECTIONS2014 S/S PARIS COLLECTIONS

 また、際立っていたのは、アートとモードの融合である。シャネルは、メゾンのアイコンをイメージしたアート作品をグラン・パレに並べ、エキジビションの雰囲気の中、絵の具のパレットを思わせるカラフルなドレスやユニークな画材風バッグなどを提案。アレキサンダー・マックイーンは、20世紀初めのアートムーブメントから多くをインスパイア。モンドリアンから発想された格子柄とトライバルなシルエットのコンビネーションが、独創的なムードを放っていた。セリーヌは、グラフィックなペイント模様がストリートアートを思わせた。鮮烈な色が目を引くインパクトのあるコレクションだ。

2014 S/S PARIS COLLECTIONS2014 S/S PARIS COLLECTIONS2014 S/S PARIS COLLECTIONS
「アート」をテーマにした、シャネルのコレクションでは、会場のグラン・パレに奇想天外な75点のアートピースが並んだ。

 春夏に欠かせない自然の草花のモチーフも今回はオリジナリティに満ちていた。エルメスは、リュクサンブール公園の温室を会場に、トロピカルな森を思わせるショー。アンリ・ルソーの絵がインスピレーションソースになったドリーミーな花柄が、シックな装いにアクセントを添えた。ディオールは、フラワープリントとアルファベットを組み合わせるなど、自然と人工的要素をミックスする実験を試みている。歴史あるメゾンのDNAを引き継ぎながらも、現代の新しい女性像を見せた力作である。

2014 S/S PARIS COLLECTIONS2014 S/S PARIS COLLECTIONS
ディオールは、フローリスト、エリック・ショヴァンによる草花のデコレーションが会場の壁や天井を埋め尽くした。

Ads by Glam

show search
Notice
media partner
fashionjp.net SOEN ONLINE room service roomsLINK
Glam