2014 S/S MILAN COLLECTIONS

変化するイタリア・ファッション。 29 NOV. 2013

TEXT MIYUKI YAJIMA

 今回のミラノ・コレクションは、6日間に渡って開催された。参加メゾンの数は、大小合わせて187。前回に比べて少し増えている。「WHITE」、「SUPER」という二つの見本市も、有力な新人を発掘しようと張り切る世界各国のバイヤーを、かなり納得させたようである。
コレクションの発表に並行して、今回はさまざまなイベントや展覧会のオープニング、パーティなどが行われ、近年になく賑やかでエネルギッシュであった。スカラ座での要人たちのパーティ、アンナ・ピアッジの帽子の展覧会「HAT-OLOGY. Anna Piaggi e i suoi cappelli」、王宮での閉会のパーティなど、イタリア・ファッション協会の積極的な協力によって実現した企画である。ブティックビッフィでは、国連の関連機関の依頼でエシカルファッションの展示会も開かれた。ガーナやブルキナファソなどで製造された布を素材に作られた、4つのブランドのデザイナーたちも参加したこの展覧会にも、市の職員やプレス関係者、バイヤー、ブランドの関係者などが集まってきていた。サンタンドレア通りからモンテナポレオーネ通りに掛けてのミラノの高級商店街では、ボッテガ・ヴェネタなどのショップオープンが相次いだ。

 特筆すべきは、若者支援の動きである。先ず、コンデナスト社はアメリカ版『ヴォーグ』の編集長アナ・ウィンター自ら壇上に立って、イタリアの5つの大学と提携してファッションの分野の勉強をしたい若者たちに奨学金を用意するという企画を発表した。フランスのケリングもイタリア版『ヴォーグ』と一緒に、世界各国の大学卒業者を対象に、傘下のファッション企業での、6ヶ月から1年に及ぶインターンの希望者を採用する、という受け入れ制度を新たに発表した。ジョルジオ アルマーニは、自社のショー会場を前途有望な新人を選んで、使用してもらう支援を前回に続けて実施した。今回、選ばれたのは、ステラ ジーン。

 今回のミラノ・コレクションは、アート、スポーツ、ゴージャス、フェミニン。この4つの単語が連想させる内容の混合であると考えれば良い。アートを着るという自意識、アートの強さに負けない着手の存在の強さ。体の動きが軽快な気分に導かれる、さまざまなスポーツアイコン。絶妙な手仕事による贅沢な装飾表現。さらに、アフリカや日本など、エスニックの美意識が加わる。

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01、02、03 女性の顔のイラストが大胆に使ったプラダのコレクション。04、05 現代のデジタル文化の繁栄を服を通じて表現したフェンディ

 さまざまなブランドがアート的な表現をファッションに取り入れ定着している。絵画やビデオや写真など、ビジュアルアートの応用は、服そのものの上に、柄となって、あるいは水彩画や油絵、版画の応用となって使われてきた。最近では、ビデオや写真がランウェーショーの舞台の背景としても使用される例が目立つ。音楽やモデルの動きも含めて、総合芸術たる舞台や映画の製作にも似ている。ショーの舞台裏でモデルに施されるメイクも、ブランドの望む女性像の表現の重要な要素の一つ。約10分から15分のショーのために1時間以上をメイクに費やす。yoox.comのthecorner.comに至っては、ステファノ・アコルシが監督を務めたショートフィルムを制作して、オンライン販売の土台として使用を始めた。

 今回は、こうしたアートの積極的な導入が目についた。プラダは、4人の壁画家と2人のイラストレーターを世界中から選び抜いてショー会場の周囲の巨大な壁面を、女性の顔で覆い尽くしてしまった。同じ顔の絵は、シンプルなドレスの上にプリントされ、その上から刺繍を施したり、スパングルが盛り上がるほどに縫いつけられたり。スポーツテーストでクラシックなフォルム、贅沢な手仕事によるドレスの上の、輪郭の明確な女性の顔。その主張の強さは、着手の強い存在感に一致しているはず。あたかも、現代のアマゾネスといった風。ますます強くなりつつある女性の印象が的確に表されている。
ミッソーニは、舞台一杯に海を映した写真を広げ、ドレスの全面にも風景を配した。ドルチェ&ガッバーナも、シチリアの古代神殿とアーモンドの花を用いたドレスやスカートなど、具象画の世界を見せている。初めてランウェーショーで発表したトッズは、アレッサンドラ・ファッキネッティによる初のコレクション。レザーを布と見まがうほどに加工した、手仕事の妙によるスポーツ感覚の服。それらを、イタリアンセットというテーマの下に、イタリアの1950年代の家具や、建築家のジオ・ポンティの作品を通じて、イタリア的美学を全面に押し出した。ジル・サンダーにおいても、軽快で繊細なスポーツ感覚の服が新鮮であった。マル二も、20世紀初めの日本の着物や浴衣の柄がヒントの、美しいビジュアルイメージを打ち出した。一点一点のプリントが、まるで油絵や版画を見るかのよう。スポーツ感覚を匂わせつつも、シックでフェミニンな女性の服からなるコレクションだが、特に優れているのは、これらのビジュアルイメージである。一方、スポーツとアールヌーボーと贅沢な手仕事と、これらが見事に溶け合って、優れて高い官能性を醸し出していたのがグッチであった。ボッテガ・ヴェネタは、アートの手法で服を作り上げた、言わば作品のようであった。

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 コレクションが終わり約2ヶ月が経つ。世の中の状況は、大変な速度で変化を続けている。つい数ヶ月前までは、中国経済の目覚ましい成長について、語られ続けていた。今、その緩慢な成長速度が語られ始め、同時に製品の売上げも下がり始めたと報道されている。どこで作るかが再び問われるようになり、商品の品質が同じであったとしても、消費者はメイド・イン・イタリーのお墨つきを要求する方向に、気持ちが転換していることが伺われる。
つい1ヶ月前まで、エシカルファッションの重要さが語られ、アフリカの女性たちと組んだ製造方式に拍手が送られていたという事実があったというのに。同時に、ディーゼルの創始者兼社長、レンツォ・ロッソは、イタリア国内の中小メーカーや職人の工房の積極的な経済支援活動を行うために、5千万ユーロを用意していると発表した。この事実は、外国支援ではなく、イタリア国内を救うことのほうに、エネルギーが使われ始めたことを知らせている。

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