2014 S/S LONDON COLLECTIONS

花とピンクとファンタジー。 1 NOV. 2013

TEXT MINA WAKATSKI

 雨、雨、そしてまた雨。今シーズンのロンドン・コレクションは、初日から最終日まで傘が手放せなかった。朝晴れ間が見えたと思っても、午後になると崩れる。雨は気分が落ち込むだけでなく、交通渋滞を巻き起こし、分刻みのスケジュールでロンドン市内のショー会場を駆け巡る取材陣にとってはこの上ない痛手だ。さらに3日目の日曜日はトライアスロンが開催され、ロンドン中心部西側の道路が閉鎖。ライブストリーミングが行われるようになり、定刻にショーが開催される昨今は、昔のように延々と待たされることは無くなったが、同時に「交通渋滞でもみんなで遅れれば怖くない」といった逃げ道もなくなった。結果、無念なことにいくつかの見たかったショーを諦めざるを得なかった。取材したショーとプレゼンテーションの数は40弱と、例年に比べて15ブランド近く少ない。もっとも、気分があまり盛り上がらなかったのは、雨のせいだけではないようだ。ここ4、5年ビッグメゾンの参加や新進デザイナーの成長でいつになく元気だったロンドン・コレクションも、ちょっぴり一段落ということなのかもしれない。世界的な不景気が続く中、デザイナーファッションとりわけ若手を取り巻くビジネスは決して明るいものでもない。実際、パンク精神に富んだクラフトタッチのコレクションで注目されていたルイーズ・グレイは、前回のコレクション発表後ブランドを休止し、秋冬シーズンの新作は生産されなかった。

 そうした中、やはり最新の話題はコレクション直前にLVMHの傘下に入った新進靴デザイナー、ニコラス・カークウッドと、ショー直後にLVMHが少数株式を買収すると同時にロエベのクリエーティブディレクターに就任したJ.W. アンダーソンのデザイナー、ジョナサン・ウィリアム・アンダーソンだ。このところ、若手デザイナーへ目を向けているLVMHとはいえ、驚きの抜擢である。ケリングによるクリストファー・ケインの買収から半年。著名デザイナーの参加だけでなく若手のビッググループ入りで、大手資本とは別のところで新進デザイナーが奔放な新作を発表していたロンドン・コレクションも、ずいぶんと様子が変わってきた。

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写真左は、ロンドン・ファッションウィークのカタログとバッグ。注目の新進靴デザイナー、ニコラス・カークウッドが今シーズンのコレクションの公式ビジュアルを担当し、彼のシグネチャー の1つであるジグザグ柄が採用された。右上は、J.W. アンダーソンのコレクションより。右下は、カークウッドの2014春夏コレクションの靴。トップの写真は、バーバリー プローサムのランウェーより。

 コレクション期間中は、インターナショナルメゾンの旗艦店のオープニングも続いた。初日の夜はポール・スミス。ボンドストリートとドーバーストリートの間に位置するアルバマーラストリートの店を改装オープン。これまで、アンティークの家具などを揃えていたポールの趣味が転じた店だったところを、隣の建物まで広げた大きなラグジュリーショップに生まれ変わらせた。コレクションラインの服や小物を中心に、ギャラリースペースも設け、アンティーク店の流れを継いで展示用の什器なども全部売り物となっている。今シーズンからマッシモ・ニコシアがヘッドデザイナーに就任したプリングル オブ スコットランドは、マウントストリートに開店。ボンドストリートにも近いこの通りはもともと高級アンティーク商やギャラリーが軒を連ねていたが、ここ10年ですっかりファッションストリートへと変貌を遂げた。プリングルの向かいには、バレンシアガやマーク ジェイコブス、クリスチャン ルブタンなどがある。ちなみに、この9番地にはレッドカーペット用のドレスでも知られる新進デザイナー、ロクサンダ・イリンチックが来春オープンを予定している。そして、具体的な場所は発表されていないが、来年末までにクリストファー ケインもこの通りに旗艦店をオープンすることを発表した。ボンドストリート界隈では、ロンシャンとベルスタッフのオープニングも行われた。そして、スローンストリートでは7月にオープンしたトム フォードのお披露目パーティーも開かれた。ファッションデパート、ハーヴェイ・ニコルズの並びにあるロンドン初の路面店には、セルフリッジズ百貨店のインショップなどにはないコレクションラインの商品がずらりと並び、圧巻である。

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上段の写真は、スローン・ストリート201-202番地に登場したトム フォードのロンドン初の路面店。下段左は、マウントストリートのショップとオープニングパーティの模様を紹介した、プリングル オブ スコットランドの動画。下段右は、ポール・スミス自ら店内を紹介するアルバマールストリートのショップの動画。

 今シーズンのトレンドは明快だ。白、ピンク、フローラル、レース、透ける素材のレイヤード、ワンピースではない単品のスカート、1970年代のアメリカ。全体に、どこか繊細かつ強さを秘めたロマンティックな雰囲気が漂っている。それにしてもピンクの人気がここまで続くと、シーズントレンドを超えて時代のトレンドのように思えてくる。パステルからパウダーカラーにかけての優しい春色は、バーバリー プローサムがリラックスムードのドロップショルダーのアウターやがっちりとしたレースにのせてアピールした。久しぶりにロンドンでプレゼンテーションを行ったアディダス バイ ステラ マッカートニーでも、大胆なプリント使いが新鮮なランニングやサイクリングのラインと並び、ブルーとライムのパステルカラーのコンビネーションで魅せるヨガのラインが印象的だった。プリントから立体的なモチーフまで花も本当に目立った。バッグなどの小物にも花びらのモチーフを多用したバーバリー プローサムのように、フローラルを直球で見せるブランドもあるが、面白かったのはクリストファー ケインだ。植物図鑑から飛び出したような、花の断面図に細部の名称まで記された柄を、レーザーカットで切り抜いてみせたりした。

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色使いが印象的なアディダス バイ ステラ マッカートニーは環境への配慮も徹底。オーガニックコットン、リサイクル糸、ドライダイの採用に加え、高度な裁断技術によって生地の95パーセントを製品化し、残りの5パーセントも再利用している。Photo:Tyrone Lebone

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 冒頭で触れた盛り上がりに欠ける一因として、クリストファー・ケインやそれに続くメアリー・カトランズなどの新進デザイナーが安定し、その次なる荒削りだけれども次世代を築く新しいデザイナーの輪郭が見えてこないことが挙げられる。そうした中、最終日に行われた3ブランドの合同ショー、ファッション・イーストはまだぼんやりとしたものだが、次の流れを予感させる気配があった。中でも動物メークのライアン・ロー。童話の世界に通じるファンタジックな世界は宮崎駿の映画「魔女の宅急便」あたりがインスピレーション源らしいが、コスプレやゴスロリとは似て非なる少女性と毒が共存する大人服として、今の気分を捉えている。余談だが、フロントローには、ラフな服装でショーを楽しむワンダイレクションのハリー・スタイルズやピクシー・ゲルドフの姿があり、とてもロンドンな気分が漂っていた。

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上は、ファッション・イーストで新作を発表したライアン・ロー。ファンタジックな作風が次世代の流れを感じさせる。下は、ファッション・イーストのフロントローに座るハリー・スタイルズ(左から2人目)とピクシー・ゲルドフ(左から4人目)。

 そして、忘れてはいけない今シーズンのもう1つのイベントがある。前夜に開かれたアジアのバイヤー、ジャーナリスト、アジア系若手デザイナーなど30人を招いてのディナーパーティーだ。英国ファッション協会のキャロライン・ラッシュCEOと共にホストを務めたのはベアトリス王女。アンドルー王子の長女で、エリザベス女王の孫にあたる25歳の王女は、出席した人々と気軽に会話をは弾ませていた。デザイナーではシモーネ・ロシャやユードン・チョイらの姿があった。映画のセットのような長いテーブルを囲んでのディナー。そのテーブルに飾られたさまざまな種類のピンクの花が実に幻想的だった。今思えば、そのムードは今シーズンのトレンドと不思議なまでにリンクしている。そんな、フォーマルでありながらもアットホームなムードのパーティは、ロンドンの若手デザイナーにとってアジアは重要なマーケットであることを改めて印象づけた。

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3枚の写真は、ロンドン・ファッションウィーク前夜に開かれたディナーパーティの出席者。01 シモーネ・ロシャ(写真左)とロンドン在住の韓国人ジャーナリスト。02 左からキャロライン・ラッシュCEO、ベアトリス王女、アニヤ・ハインドマーチ。03 ユードン・チョイ(写真左)とキャロライン・ラッシュCEO。ⓒ Darren Gerrish / British Fashion Council

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