YASUKO FURUTA

15周年のトーガと古田泰子。 11 JAN. 2013

PHOTO TOHRU YUASA(B.P.B.)
TEXT MARIKO NISHITANI

 トーガは、2012年に15周年を迎えた。去る11月3日には、五木田智央(画家)、加賀美健(現代美術作家)、大類信(アートディレクター)、大橋修(アートディレクター)、石黒景太(グラフィックデザイナー)、鈴木親(フォトグラファー)、日野日出志(漫画家)など、11人のトーガに関わりのある国内外のアーティストがデザインしたコラボレーションTシャツを発表し、その夜には東京・原宿の直営店と恵比寿のリキッド・ロフトでの二部構成でパーティを開催。栗野宏文(ユナイテッドアローズ クリエイティブアドバイザー)などもDJとして参加した。参加者の顔ぶれ一人一人に、デザイナーの古田泰子の好みが色濃く反映されているところがいかにもトーガらしい。

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トーガの15周年を記念した限定Tシャツ。手前のものは、アートディレクターの大類信がデザイン。この他にも、デザイナーの古田泰子と関わりのあるメンバーが参加。トップの写真は、デザイナーの古田。東京・恵比寿のアトリエで撮影。

 古田泰子が率いるトーガを紹介すると、ブランド創立は1997年だが、2001年にトーガアーカイブスという会社を設立。同年、ランウェーショーでの発表を始め、たちまちクリエーションのユニークさが東京コレクションの中でも熱狂的な人気を博すようになるが、'05年秋から発表の場をパリに移す。最初の3回はランウェーショーの形式で発表したが、その後は展示会形式に移行。'04年からメインコレクションの要素を日常着に落とし込んだトーガ プルラ、'05春夏シーズンから一点もののコレクション、トーガ ピクタ、'10年からリ・マスプロダクションをテーマとしたオッズ&エンズ、'11年からメンズラインのトーガ ビリリースを発表するなど、ブランドを拡張している。『ハイファッション』の'09年2月号では、30ページに及ぶ特集「サカイとトーガ。世界が注目する東京の二つのブランド。」を企画。同時期にコム デ ギャルソンで働いた共通点を持つ阿部千登勢と古田泰子という二人の女性デザイナーを比較しつつ、両ブランドのファッションページ、インタビュー、国内外の関係者のコメント、ブランディングを紹介した。それからすでに4年、この15年という時間をデザイナーの古田泰子はどう捉えているのか話を聞いた。

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2枚の写真は、雑誌『ハイファッション』2009年2月号の特集「サカイとトーガ。世界が注目する東京の二つのブランド。」より。左は、サカイの阿部千登勢とトーガの古田泰子がお互いについて語った特集の扉ページ。右は、古田が自らスタイリングを手がけたファッションページ。緑魔子や市川美和子など、個性豊かなモデルのキャスティングが際立つ。写真家は鈴木親。

15年という時間。

2012年で15周年ということですが、トーガアーカイブスが設立されたのは'01年ですから、その前から、ということですね。1997年というのはどんな状態だったのでしょうか?

古田泰子(以下 古田)  初めて場所を借りて展示会を行った年です。それまでは自分でバイヤーの連絡先を調べ、アポイントを入れて、作った洋服を持って見せに行ったりしてはいたんですけど、きれいにアイロンかけて持っていったにも関わらず、持って行く途中で皺がついてしまったりと100パーセントの状態で見せることができないことにストレスを感じていました。そんなこともあって、会場を借り、まずは自分が納得いく状態で見ていただくことが、やっとスタートなのだと思いました。'97年というのがその初めての展示会だったんです。色々な人に連絡をしたのですが、3日間で3人のバイヤーが来ただけでした。とにかく待つばかりの暇な展示会でした。会場は、東京・目黒にある知人のカメラマンのプライベートスタジオを善意で3日間3万円で借りることができました。生地を買ってサンプルを作ったら会場代なんて、もう残ってなかった。

その時はどんなものを作ったのですか? エスモードのパリ校に留学していた時は、メゾン マルタン マルジェラなどを見て感じるところもあったのでは。自分が作るんだったらただ可愛いものじゃなくて、ちょっと違うものをやってみたいとか?

古田  その時、作ったのは全部ドレスでした。そして、立体的なものでした。頭の中にあるものをとにかく形にするだけで、客観的にどう見られるかってことは考えてなかったです。

インターネットでトーガを検索すると、「イノセントとアンダーグラウンドを融合したブランド」という記事が出てきましたが、そういう評価についてはどうですか?

古田  イノセントって、ピュアなイメージがあって、純真さとか無垢さということなのでしょうけど、大人の女性に対しては、イノセントっていう言葉をあまり良い意味には受け取っていません。無知とか無学な印象があって。むしろ、いつも考えているのは、両極のものを結びつけるものにしたいということです。

でもトーガにはアンダーグラウンドなイメージはありますよね。とすると、もう一方は?

古田  アンダーグラウンドのもう一方というより、柔らかさと硬さとか。人を形成しているものって一つではなくて、ソフトに見える人でも、ものすごく力強さがあったりとか、相反するものが存在していると思います。特に女性は。その対極なものを素材でもデザインでも、結びつけているんです。

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トーガのコレクションを作り出してきた古田の手。指輪とバングルが光る。

きれいなものと醜いものとか。

古田  そうですね。完全な100パーセント、ビューティというのはあまり興味がないのです。

それはスタートの時から?

古田  はい。女性デザイナーなら、誰でもそうじゃないですか? ココ・シャネルにしても、理想郷を求めるというよりは、やっぱり女性を解放することを考えていたと思う。例えば、ヴィオネもシルエットは体に添っていて美しいけれど、実はバイヤスカットで体を自由にすることを考えたとか。何か、今まで自分たちが当たり前だと思っていたことから解放される瞬間を発見すると、喜びに変わるでしょう。トーガの場合、ゼロから作る新しい提案じゃなくて、組み合わせたことによって、新しく見えるものを模索しているとも言えます。

改めて回顧すると、自分としては進化してきたなという感じですか?

古田   私は恵まれているのでしょう。表現に必要であれば使いたい素材、やりたいことを絶対無理してでも形にすることに皆さんから協力を受けていました。駄目っていう人はいませんでした(笑)。もちろんビジネスをベースにしてはいるんですけど、完全なMD(マーチャンダイジング)優先のビジネスではないし、私自身アート作品のようになってしまって世の中に受け入れられないものを作るというバランスの持ち主ではないので、やってこられたのではないでしょうか。ストレスを与える服には興味も無いんです。幸いなことに、自分のやりたかったことをそぐわないから諦めるっていうこともなかったですね。

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青と赤のパールが散りばめられた化繊のニット。トーガの2013春夏コレクションを代表するアイテムの一つ。

理想的ですね。外から見ていると、トーガの服は自由に古田さんが好きなものをデザインしている感じがありますから。思い返すと、すごく凝った素材を良く使ってきましたよね。反面、すごく安っぽい素材も使う。ペラペラのナイロンがあるかと思うと、高級なジャカードもある。

古田  自由を求め、いつも両極を混ぜます。ただ実際にやりたかったことに関して、技術が追いついてこないとか、職人さんとの意思疎通ができない苦しさはあります。現実として色々あるんですよ。色一つとっても、この色が大事だと分かってくれる人たちと出会っていかなければならないのですが、違いを分かり理解し合うには時間がかかるものです。この12年か13年は担当者は変わってませんね。

今は、もう落ち着きましたか?

古田  落ち着かないです。今でもずっと問いを投げかけながらやっています。面倒がらずお互いに理解しようと、キャッチボールがきっちりできるようになってきましたね。パタンナーも縫製工場との関係性を作ってきていますし。会社の規模が大きくなったことで、海外とやり取りできる余力も出てきました。例えば、先シーズンからポルトガルで靴の生産を始めましたが、こことも長いつき合いになっていくのが理想的です。そういった具合に、お互いにやりたいことを認め合い、ビジネスとしても良い成績を出すのは、そんなに簡単に行くことではありません。

今、素材はほとんど日本ですか?

古田  ほとんど日本ですが意識して分けてはいないんですよね。基本的に新しい提案は見れる限りすべて見ます。

外国製のものも?

古田  あります。こういうことをしたいと探してみたら、様々な国があったということですね。今回は全部日本だったというシーズンもあります。あまり最初から分けて見ていません。

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ショールームに並ぶトーガのアイテム。今シーズンは、くすんだような色彩の小花柄のデザインも目を引きつける。

海外に行くということ。

05年秋、つまり'06春夏シーズンから、発表の場をパリに移していますが、日本と海外と販売の割合はどうですか?

古田  同じぐらいですね。コレクションラインは完全に海外のほうが多いですが、トーガ プルラは日本のほうが多いです。海外に行き始めた頃、日本の市場では、私たちの提案とお客さんの買いたいものとの違いを感じて、そこでトーガ プルラをより国内に目を向けてやっていこうという意識を強めました。

なるほど。トーガ プルラは単なるセカンドラインではなくて、別の自立した動き方を......。

古田  そうです。世界のマーケットで見ると、トーガ プルラよりも、コレクションラインを買いたいというお客さまもいます。今は、トーガの世界観、トーガ プルラの世界観を分けています。

ここ数シーズンを見ると、ラグジュリーなものが増えていますね。豪華な素材やファー使いなど。あれは、具体的な購買層がいるのですか?

古田  海外では、特別な時に着ていく特別な服が欲しいという要望が多いんです。夜着替えて、ドレスアップして出かける場所もある。コレクションラインには、特別にドレスアップしたいと思うお客さまが増えてきてます。ドレスアップ、といっても単に豪華に着飾るという意味ではなく、何か挑戦したいっていう。

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トーガ原宿本店のラックに掛かる、つけ衿とゴージャスなファーを使ったアームカバー。

ただのドレスアップだったら、老舗のオートクチュールもあるし。

古田  そうなんです。同じ価格帯なら、歴史ある老舗メゾンを好む傾向があるので、違うベクトルで提案します。

エッジのある、新しい提案をしっかり作っていくということですね。

古田  そうですね。新しいものを手にする時に、安心感を得たいというよりは、ワクワクしたいとか、新しい感覚に触れたいと思うようなことを要求されるお客さまですね。着る場所やシーンがなかなか思いつかない。要は必要とされていない。そこを無理して押すつもりはないのです。

そういうダブルスタンダードというか、ある意味、二面性が必要なんですね。では、メンズはどうですか?

古田  メンズはレディスと違って、私が考える男性にとって必要なワードローブである最低限のアイテムを、'50年代のクラシックスタイルをベースに提案しています。ベーシックなジャケットとパンツのスーツスタイルを軸に、シャツ、コート、ブルゾン、イージーパンツ......といった具合です。中でもテーラードをきっちりやりたいっていう気持ちがあったんです。

日本の場合、メンズは国際的にも通用するマーケットが出来つつあって、日本のマーケットにちゃんと乗せると海外も注目しますね。海外のバイヤーもメンズは見に来ているようですし。

古田  それとアジアのお客さまですね。みなさん、東京にも頻繁に来ています。メンズラインは、日本よりアジアのバイヤーさんのほうが先だったんですよ。トーガがメンズを始めると伝えたら、すぐに見に来てくれました。

それはメディアとも関係があるのでは?

古田  そうですね。あとは、ショップの売りかたの違いですね。日本のセレクトショップはそのシーズン、バイヤーさんのピックアップしたアイテムを全部を混ぜることにより、ショップのカラーを出そうとするところが多いのに比べて、アジアのショップは、ラックで見せてデザイナーの色を出します。ポップアップショップなど、トーガもビジュアルを用意して、今シーズンはこういう取り組みですって強調しやすい。その点では日本よりも、デザイナーのイメージを強く出しやすいです。

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写真はトーガ原宿本店。壁に貼られたポスター(左)と孔雀の作品(右)。

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