Stephan Schneider

ステファン・シュナイダーが今考えていること。 6 JUL. 2012

PHOTO TOHRU YUASA(B.P.B)
TEXT MARIKO NISHITANI

一見、いかにもドイツ的な謹厳実直な服。しかしその中に大きな自由とユーモアが隠されている。それがステファン シュナイダーの服だ。パリでショーをやらなくなって数年。コレクション情報として雑誌に露出することは減ったものの、メンズを長年取り扱っている東京・代官山のリフトによると、当店でいちばんの売り上げをキープしているブランドなのだそうだ。長く続くファンも多い。そんな日本の顧客に向けて、自ら展示を手がけるために来日したステファン・シュナイダーに、現在の服づくりの考えを聞いた。

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上は、リフトのショールームの壁に展示された、2012-13秋冬のステファン シュナイダーの象徴的なコーディネーション。すべてデザイナー自身が構成した。トップ画面は、服について熱く語るステファン・シュナイダー。

ステファン・シュナイダーさんにお目にかかるのは、7年ぶり。2005年に、日本ドイツ年の展示のために来日なさった時にインタビューして以来ですね。その間、原宿のショップを閉鎖したり、パリコレ参加を中止したり、ベルリンの大学で教鞭をとられたり、いろんな変化がありましたが、今も服を作り続けていらっしゃいます。今日は、最近お考えのこと、それから今シーズンのコレクションについて、お話を伺いたいと思います。

ステファン・シュナイダー(以下S)昨日、インターンで協力してくれる学生を集めて、ワークショップを開いたのです。その時に話したのは、今ファッションは、年齢の行った人たちに目を向ける時期に来ていると思うよということ。モデルにしても、若い子ばかりでなく、年配の女性が出ていたりすると、若い人にとっては逆に新鮮だったりするでしょう。その人たちのもっている経験や時間の蓄積が僕は好きだし、むしろ、今や、「新しい」という言葉にはネガティブなものを感じてしまうくらいです。ショップでも、知識の豊富な年配の販売員がいろいろ説明をしてくれると、説得力があるし、勉強になるでしょう?
それから、ルック(流行)という言葉に対しても、僕はネガティブなんです。僕たちが気にするのは、個人個人のパーソナリティであって、ルックじゃない。ルックというのは、ファッションの世界だけで通用する言葉ですからね。この顔が今やルックだとか、この服がルックだとかって言い方をするけど、僕はごめんですね。興味がないんです。ステファン シュナイダーのルック?ありえないです。うちには、ただのガーメント(服)と、そのガーメントを着用する人々がいる。それだけ。ルックというのはひとつのコードなんですが、今や、それがコミュニケーションを難しくしていると思っています。
ルックで語られることと言ったら、ロック、セクシー、クール、キュート、グラマー、などのありきたりな単語ばかり。どれも見かけのことですよね。ファッションというのは見かけ。だからマーク・ジェイコブスのようなデザイナーを始め、みんなルックが好きなんだけど、僕はダメなんです。だから僕は、ルックに対抗してみようと思っているんです。

いきなり、「ルック」に宣戦布告ですね(笑)。それはつまり、見かけ以上のもの、たとえば、エモーションや精神性をファッションに加えていくということですか?

S   そう。これは、僕がデザイン画を描かない理由でもあるのです。なぜかと言うと、ファッションを「描こう」とすると、長い足に小さな頭になってしまう。これはきれいかもしれないけど、リアリティはない。でも、僕はいつもリアリティを考えています。で、やっぱりルックじゃないんです。何度も言いますが。

こういうことをずっと最初から考えていらしたんですか?

S  最近はとみに、ですね。2006年あたりから。2000年から、僕は数年間ずっとファッションショーをやってきたんですが、2006-2007年秋冬のショーが終わった後、ハッピーじゃなくなったんです。モデルがランウェーに出てきたときはワォと気分が盛り上がるんですが、ショーが終わるとなんともイヤな気分になってしまったんです。自分がなにをやりたかったのかわからなくなってしまった。で、考えてみて、わかったんです。僕が作りたいのは、服であって、ファッション産業が求めるルックではないってね。アドバタイズメントをするにはルックが必要でしょ。まあそんなことがあって、僕は考えを変えたんです。そして、本当に服に戻ることを決心しました。もっと服に集中しようって。

そうだったんですね。でもステファン シュナイダーのサイトでは、コレクションごとに、すてきなファッション写真を発表してますよね。

S  そう。でもあれはファッションショーの写真とは全く違うのです。ルックを見せるものではありません。ステファン・シュナイダーは、もう伝統的なファッションの世界では仕事はやりません。普通のスタイリストには、僕の仕事はできないと思います。というのは、彼らはルックがほしいのですから。ディオールのシャツを着せよう、クリーンがルック(流行)だから。ドリス・ヴァン・ノッテンにしようか、エスニックがルック(流行)だからっていうところには、服に対する敬意なんてないと思いますよ。
たとえばレストランに行って、何かを初めて食べる時って、ちょっと戸惑いがあるでしょ。何が出てくるかわからないし。ファッションもそうで、でも試食をしている時間がない。メニューから自分で選び出すのはとても難しい。そういうときに、グラマーでセクシーでラグジュリアスでというルックがお手軽に登場してくるんです。だから、ルックになってしまうんだけど。
僕は、そういうのはもうやめて、自分で試してもらい、時間をかけて服を理解してもらってーーそういう関係をお客と結びたいと考えているのです。

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上は、今シーズンのコレクションより。クラシックな中に、ディテールが光る服ばかり。

今回の展示はメンズだけですが、レディスでもそういうお考えなのですか。こういうあなたの考え方はレディスよりもメンズでの方が実現できるのではと思いますが。

S  そうとも言えるけど、そうでないとも言えます。僕が見るに、ステファン・シュナイダーの女性のカスタマーは、いわゆるファッションを望んでないんじゃないかと思うんです。彼女たちは、女性向けのテーラーシャツやメンズ風のトラウザーをほしがったりするけれど、デコレーションは望んでいないのです。彼女たちはピュアネスが好きなのです。僕のお客さんにもいますよ、クリスマスツリーみたいな装飾がきらいで、ジュエリーもつけるのは好きじゃないし、メークもしない人が。

ドイツとか、ベルギーとか、オランダとかスウェーデンとかの北の国にはそういう女性がいそうですね。日本にもそういう好みの女性が、最近目につくようになってきましたね。ファッションの中心を日常に置きたい人はたくさんいますよ。

S  そうかもしれないね。ステファン シュナイダーはそういったわけで、ニッチなブランドなんです。決してすべての人のための服ではないんです。そういったことをここ数年で学びました。カスタマーは世界の0.000005パーセントくらいです。でもその人たちに向けて集中します。だれでもウェルカムですし、ドアはいつもオープンです。でも、多数に受けるために努力をするのはやめることにしました。デニムとTシャツとスニーカーとバッグとコートとナイロンアイテムをどれも少しずつというやり方はしないのです。それはレディースでも同じです。

ベルリン美術大学での教授のお仕事も、一段落だそうですが、この体験はどうでしたか?

S  5年間、とても密度の高いことができたと思っています。ヴィヴィアン・ウエストウッドが12年やった後に就任したので、最初は大変でした。ヴィヴィアンは、ルックを教える人でしたから。それも自分のルックを。僕のアプローチは正反対だったのです。僕が要求したのは、ルックをどう解釈するかではなく、それぞれの学生たちのシグニチャーでしたから。5年経って、ちょっと休憩。ベルリンとアントワープの往復は結構大変でしたから。

学生は何人くらいいたのですか?

S  1学年20人です。で、全部で70人の学生を見ていました。受験生は毎年1000人でしたから、かなり狭き門ですね。

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