RAG & BONE

ニューヨークのイギリス人。 19 NOV. 2013

PHOTO JUN TSUCHIYA(B.P.B.)
TEXT MARIKO NISHITANI

 マーカス・ウェインライトとデヴィッド・ネヴィルは共にイギリス出身。マーカスがニューヨークに渡ったことがきっかけとなり、デヴィッドも移住。独学でファッションを勉強し、2001年にもう一人の友人ネーザン・ボーグルと3人でブランドを設立。ラグ & ボーンの歴史はこんな風に始まった。ネーザンが抜けた後、2人はブランディングをきちんと行い、'06年からニューヨーク・コレクションに参加。最初はメンズとレディスを一緒に発表していたが、'13-'14秋冬シーズンからは、コレクションを分け、それぞれに異なるテーマを設定し、'14春夏シーズンにメンズはロンドンに発表場所を移した。靴やバッグ、ジーンズのラインも作り、この秋には伊勢丹新宿店で世界初のポップアップストアも展開。それを機に来日した絶好調の2人にインタビューを行った。

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写真は、10月に伊勢丹新宿店で行われたポップアップストア。上は、壁に貼られた秋冬のキャンペーンビジュアル。下の2枚は店内の模様。デザイナーの二人が商品の説明を書いたチョークボードも飾られた。トップは、マーカス・ウェインライト(写真左)とデヴィッド・ネヴィル(右)。

5年前(2008年)に雑誌『ハイファッション』のニューヨークのメンズブランド特集で取材をさせていただきました。あの時は、まだ若手のブランドでしたが、あれから、目を見張るような成長ぶりですね。

デヴィッド・ネヴィル(以下 デヴィッド)  ポートレートの撮影をしたのは、ミートパッキング地区のアトリエだね。今もそこですよ。ただし、フロアは増えました。

この時はジーンズが代表的なアイテムで、とてもカジュアルなブランドというイメージでしたが、服の種類も広がり、トラッドなイメージからすっかりスタイリッシュになりましたね。改めてブランドとしての力を持っていると再認識しました。この5年間の歩みはどんな風だったのでしょうか?

デヴィッド  ひと言で言って、ハードワークでした。この5年間にいろんなことが起こりましたからね。子供もできたし、洋服のラインも増えたし、それに伴って服だけじゃなく、バッグとかシューズとか、それぞれにラグ & ボーンのストーリーを構築していく作業が大変でした。

マーカス・ウェインライト(以下 マーカス)  いや、大変だったけど、とても楽しい5年間でした。

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『ハイファッション』の2008年6月号では、「新感覚トラッドのニューヨークデザイナーたち」という企画の中でラグ & ボーンを取材。右ページに写る、アトリエで撮影した若かりし二人の姿が印象的。

元々、イギリスからニューヨークに出て来てブランドを始めるにあたり、スタート時に考えていたことと、今考えていることとは繋がっていますか?

デヴィッド  クリエーションにおいて? それともビジネスにおいて?

クリエーションについて、まず聞かせてください。

デヴィッド  最初から、ここまで来られるとは予想もしていなかった。良いものを頑張って作り続けたから、ファンがついて来てくれたんじゃないかな。そのことに尽きると思うよ。会社の規模も大きくなったし、ファッションをベースとしたクリエーションを続けて来ているけど、ショーのためのピースとなりうる洋服を発表しつつも、現実的で着られる服を地道に作り続けて来たと思っている。岐路となったのは、2013-'14秋冬シーズンでメンズとレディスのコレクションを分けたことですね。それまでは一緒に見せていたものを、分けることでビジネスも一層しっかりさせることができたんだ。

メンズとレディスを分けた時に、どっちかをより強くするということはなかったのですか?

デヴィッド  当初はレディスに70パーセントぐらいエネルギーを割いたと思います。レディスのほうがトレンドに左右され易く、インスピレーションを組み立てたり、デザインワークが大変だからね。メンズは普遍的なアイテムが多いので、どちらかと言うと、レディスに注力しました。最近は、そのバランスが取れて来ました。テーマもそれぞれ変えています。一緒に発表していた時は、同じテーマで見せなければならないので、無理があったのかもしれません。今はまったく違うテーマを作っています。メンズは宇宙をテーマにして、レディスは地獄をテーマにするとか、これは冗談ですが、そういう風に違うテーマでコレクションを見せても上手くいくようになってきました。

2014春夏シーズンのレディスは、「大草原の小さな家」がテーマだそうですが、これはどういうところから来たのでしょうか? 日本人の女の子はこの物語がとても好きで、人気テレビドラマだったのです。でも、日本人のイメージの中にある「大草原の小さな家」とこのコレクションはかなり違いますね。19世紀のビクトリア調で小花柄のフォークロリックなドレスなどはまったく出てきませんね。ラグ & ボーンには、そんな甘さはなくて、力強くモダンなコレクションに仕上がっていますね。

マーカス  この「大草原の小さな家」というのは、僕たちにとっては、インスピレーションの一つであって、他にも1990年代だったり、サムライだったり、西洋と日本のものとの融合だったり、いろいろインスピレーション源はありますし、またインスピレーションを受けたからと言って、そのままを出すわけではなく、自分たちの世界観を表現することが重要なのです。「大草原の小さな家」からヒントを得たものは、開拓時代のちょっと粗野なイメージ、エプロンっぽいドレスなどにすぎません。あくまでも自分たちで咀嚼したものを発表しています。「大草原の小さな家」もむしろ女性性というよりは、たくましさにフォーカスしました。

2014春夏レディスコレクションのランウェーショーのビデオ。

ビジネスについての質問になりますが、日本というマーケットを今はどう据えていますか?

デヴィッド  日本のマーケットは、アメリカや韓国、イギリスに比べてデパートの存在感が弱い感じがします。アメリカではカテゴリー分けした専門デパートがあって、靴、バッグ、ジーンズの専門のデパートもあるけど、日本にはそういうものもない。その分、日本では直営店が好まれるという傾向を感じています。若干チャレンジングだけど、東京の表参道と二子玉川に、2軒のショップを開いたので、しばらく様子を見て行こうと思っています。

コレクションを作る上で、やっぱりアメリカというマーケットを意識しますか?

マーカス  デザインする上で、特にどこかの国に合わせるということはありません。前回の2013-'14秋冬シーズン前に比べると、今シーズンはずっとクリーンでミニマルで、ピュアになっている。これを着るのは日本人の女の子でも中国人の女の子でもいいんだ。うちの会社には約300名の社員がいるけど、75パーセントはアメリカ人ではない。国籍や人種でデザインするという発想はまったくないんです。

2014春夏シーズンのメンズコレクションをロンドンで発表した理由を教えてください。

デヴィッド  ご存知のように我々はイギリス人で、ロンドンには大きなショップもあります。でも、イギリスでは僕たちがイギリス人とは知らない人も多い。ビジネスはアメリカでずっとやってきたからね。そのアピールが一つ。でも、もっと大きな理由は、6月のメンズのファッションウィークのシーズンにニューヨークではファッションウィークをやっていないことだね。ニューヨークでファッションウィークがある9月まで待っているとマーケットは終わってしまう。ロンドンでは、バーバリー プローサムやトム フォードもコレクションをやっているけど、これも同じ理由からだと思うよ。

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今年の6月に開催された、「ロンドン・コレクションズ:メン」の中で行われたメンズのショー。上段は、ランウェーのビデオ。下段の左の2枚は、ルック写真。右は、バックステージのビデオ。

ロンドンとニューヨークのメンズについて聞きたいのですが、この2都市の間で、メンズファッションにおける温度差というのを感じますか。

デヴィッド  アジアのメンズファッション市場は、アメリカよりもヨーロッパに影響されている気がしますね。トラッドな分野でも、アメリカとヨーロッパの違いがよく話題にされますよね。アメリカに比べると、イギリスのマーケットはデザイン性が高く、クリエーティブであることが重要とされています。一方、アメリカのマーケットは遥かに規模が大きく、クリエーティビティよりも商業的な部分が重視されがちですね。イギリス生まれの僕たちはある意味上手くブレンドされているのかもしれません。両方の「温度差」を上手く使い分けているのかも。

生産はほとんどアメリカですか?

デヴィッド  コレクションのほとんどはアメリカだけど、セーターはアジア、Tシャツはペルーなど、クオリティを重視しているので、例えば、セーターをアメリカで作ろうとは思わない。優れた工場があったらそこで作る。中国に良い靴の工場を見つけたら、そこに発注する。メイド・イン・アメリカにこだわっている訳ではなくて、質の高いものを常に求めているので、アイテムにあった国と工場選びをしています。

イギリス製のアイテムはありますか?

デヴィッド  靴ですね。それからウール、ハリスツイードなど、イギリスには素晴らしい素材がたくさんありますので、もちろん使います。ただし、縫製はサヴィル・ロウなどは別として、今ひとつかな。

この仕事をしていて、イギリス人で良かったなと思うのはどんな時ですか?

デヴィッド  いつもです。アメリカで服作りをすることで、ユニークな視点を持つことができている気がします。イギリスのバックグラウンドは、本物を追求する上では、素晴らしいと思います。アメリカ人で、イギリスっぽいものを作っている人にはまねのできないものを持っていると自負しています。

マーカスさんはいかがですか?

マーカス  イギリス人に生まれて良かったと思ったのは、ロンドンに久しぶりに帰ってパブで一杯飲んだ時かな。アメリカでビジネスを成長させて来たけど、それをみんなが祝福してくれるし、両親はハッピーだし。

イギリス人は食べることに興味がないと思われていますが、あなたたちはどうですか?

デヴィッド  僕たちは、日本に来ると銀座のすきやばし次郎で寿司を食べるし、昨日は岡半に行って、今日は天ぷらを食べたよ。この間は、おでんも食べたし......。十分グルメだと思うけど、どう? フィッシュ&チップス以外においしいものがあることは、ちゃんと知ってるよ!

RAG & BONE

マーカス・ウェインライト、デヴィッド・ネヴィル(ラグ & ボーン)
イギリス出身のマーカス・ウェインライト(写真左)とデヴィッド・ネヴィル(右)が、2002年にアメリカ・ケンタッキー州でブランドを設立。日本製のデニムを使い、ケンタッキー州で生産するレディスのジーンズが人気を集め、その後、レディスとメンズのトータルファッションを手掛けるようになり、'06年からニューヨーク・コレクションに参加。モダンなデザインとブリティッシュヘリテージを組み合わせた独自なスタイルで注目を浴びる。'07年にはCFDAのメンズウェアの新人賞、'10年にはCFDAの大賞を受賞。'10年に東京・表参道店がオープン。二人の役割分担は、デザインはマーカス、ビジネスはデヴィッドが中心に担っている。

お問合せ プレッドPR tel.03-5428-6484
www.rag-bone.com


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