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マッツ・グスタフソンインタビュー。 11 Jun. 2012

先ほどアントニオ・ロペスやグリュオーの絵というのは、説明的な絵だと申しました。ですから、シルエットがどうとか、素材が何だとかはすぐわかるのですが、マッツさんの絵はわかる人にしかわからない、見る人にもあるレベルを要求する絵だと思うのです。この絵を最初にいいと言った人の目はすごいなと思いますね。今や、何でも動画になったり、字幕がついたり、説明的な時代ですよね。ファッションの想像力もある意味、退化していると思うのです。

G  そんな風に私の仕事を見てくださって感謝します。私が長い間仕事をしてきて思うのは、ファッションというのは、今や大きな産業になってしまい、そういう時代に私が寄与できることはなにかと思うと、私のパーソナルなヴィジョンしかないだろうと。でもいつもうまくいくわけではないのです。ディテールが十分じゃないというのは、しょっちゅう言われることですし。でも、私のアプローチというか、哲学というのは、写真家ができないことをやるということなのです。それから、私はモデルという存在に興味がないのです。大事なのは、服とシェイプで、それがファッションのエッセンスだと思っています。だからそこにフォーカスするのです。でも、時にはそれはすごく難しい。私にとって必要なのは、興味深いデザインなのです。つまらない服は辛いですね。
私はコレクションをたくさん見るという訓練を通して、自分独自のファッションの見方を身につけることができたのかもしれません。

そのファッションを見る時のコンセプトというのをもう少しくわしく話していただけますか。

G   そうですね。まず、私にとっては、シーズンごとにくるくる変わる流行には興味がないですね。私が興味を持つのは、もっと大きな、ファッションというものの持つパースペクティブであり、その変化の様子なのです。ファッションが有機的な仕方で変わって行くことに興味があります。秋のコレクションがあって、春のコレクションがあって、というその個々の情報でなく、私はそこで生まれる変化というものに興味があるのです。でも、もし、文句なく偉大なデザインというものに出会ったら、その時は自分のファッションに対する抽象力を最大限に使って、絵として捕らえようとするでしょうね。
石や樹を描く時にはデザイナーはいりませんから、その時は自分の意のままに描くことができるのです。

でも、ファッションというこれだけ刺激的でどんどん情報が来る中で、マッツさんの泳ぎ方はすばらしいなと思いますね。

G  もうこの世界に長いですからね。いろいろわかってきます。いろんなものは、やってきて、そして過ぎ去って行く。どんな世代も新しいものを発見できるようになっている。ほとんどのものはすでにやられてしまっているにもかかわらず。少し異なった形でカムバックするんです。でも、ファッションはときに、刺激的でありすぎますね。まず情報が多すぎるし、いつも重要とはいえない、泳ぎ方とおっしゃいましたが、重要な仕事を残すためには、本当にいいデザインを見抜くことですね。

ファッションについての最後の質問です。コムデギャルソンの絵も何枚も描いていらっしゃいますが、コムデギャルソンを最初にご覧になった時は、どういう反応をお持ちになりましたか?

G  コムデギャルソンを知ったのは、1980年代の初め、ニューヨークで、でした。最初に見た時、これは今までにない、全く違うアプローチのファッションだと思いました。それが私の人生を変えたと言ってもいいくらいで、一つのマイルストーン(画期的な事件)となったのです。ファッションにおいて、非常に重要な変化が起きていると感じました。何が一体起きたのか、すぐに日本に行かなければと思いました。私の初めての日本への旅は、コムデギャルソンを見るためだったのです。1983年に日本に行きました。マリ・クレールの仕事を既にしていましたので、パリでのコムデギャルソンのコレクションは欠かさず見ていました。マリ・クレールは、当時ずいぶん、コムデギャルソンをサポートしていたと思いますよ。

ピーター・リンドバーグに撮らせたりしていましたね。

G  そうそう。そしてコムデギャルソンは、あとに続くデザイナーたちにも大きな影響を与えているでしょう。マルタン・マルジェラ、ジル・サンダー、アン・ドゥムールメステール、ヘルムート・ラングなどに対してもね。ほんとうに、ファッションにおけるマイルストーンだと思いますよ。

では、そろそろ自然のお話の方に。これまでお話ししてきて、多分、ファッションをお描きになる時も、自然をお描きになる時も、そのそこに流れるものは一緒だということを感じましたが、いかがですか?

G  そうですね。絵に向かう姿勢と言うか、そういうものは変わりませんね。私はなにに向かう時でも、エッセンスをつかみ取るということです。それは、私自身の作品を作る時も適用されます。そして、私は人のエレメントをそのまま使おうとは思わない。ファッションにおいては、同じように、そぎ落とし、なんどもやり直し、簡素化し、何度もやり直しーーそのプロセスは自分自身の作品を作るのと同じです。

作品の場合は自由な部分、とても厳しいのだろうなという気がします。

G  そうですね。でき上がったものはとてもシンプルだけど、その過程はシンプルではない...確かにそうですね。そして、解決すべき問題を抱えている時の方が、逆説的にいい作品ができるという意味では自由であることは厳しい。
簡単に見せているけれど、その実簡単では全くない。

しかも書き足して行ける仕事ではありません。一枚の絵のうしろには無数のNGがあるんでしょうね。

G  そうなんです。ゴミ箱がいっぱいになります。でもこの、集中している時がとても楽しいのです。悩む瞬間でもありますが。ファッションと岩や樹を描く時との大きな違いは、ファッション・イラストには締め切りがあるということです。自分自身の作品では遥かに時間があります。時間があるので、時間をたっぷり使ってなんども推敲したり、行ったり来たりして、完成に近づいて行ける。ただ、ファッション・イラストの仕事を通じて、速く描く訓練はできましたよ(笑)。

これからも、人間は描き続けていらっしゃいますか?

G  そうですね。人間というのは、これからも取り組んで行こうと思っているテーマです。今は、自然を中心にしていますが、人間というのもまた私の大きなテーマなのです。いつでも戻って行くところかもしれない。モードというよりは、人間ですね。顔、そして体というのは、一つの自然としてのおもしろさも備えていますからね。手の届くところにありますし。

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トップの写真は、「Trees and Rocks Mats Gustafson」展を開催した恵比寿のMA2 Gallery のガラス窓。オープニングはあいにく雨だったが、大勢のファンが集まった。上左は、展示作品より、「ROCKS -Black Rock」( 51.5×38.5cm water color)、右は「TREES -Swamp」(40.5×31cm oil on panel)

Mats Gustafson / マッツ・グスタフソン
1951年、スウェーデン生まれ。ストックホルムにあるDramatiska Institutet を卒業後、初めはステージデザインの仕事でその独特の感性が注目される。 そこから、世界各国の有名なファッション雑誌でのイラストレーションの仕事に展開。 グスタフソンの抽象化されたエレガントで繊細な水彩やパステル画、また切り絵の作品は、ファッション・イラストレーションの世界の可能性を広げ、 新しいジャンルを確立させた。 主な仕事にイタリアン・ヴォーグ、フレンチ・ヴォーグ、 The New Yorker、Visionaireなどの雑誌。 エルメス、ティファニー、ロメオ・ジリ、ヨウジヤマモト、コムデギャルソン、エストネーションなどのファッションブランドのブランドヴィジュアルを手がける。 2000年以降は、主に自然を題材とする作品を発表。より本質的なものを求めロングアイランドのスタジオの周りにある樹々や岩、石、白鳥などを描く。
ストックホルムやニューヨークを中心に展覧会が開催されている。
matsgustafson.org
www.fashionillustrationgallery.com/store/category/artists/mats-gustafson/

「Trees and Rocks Mats Gustafson」展は、MA2 Galleryにて4月14日から5月27日まで開催。
展覧会は終了しましたが、本展のために制作したカタログ(残部僅少)のほか、作品も一部、販売を継続しています。詳しくは、ギャラリーにお問い合わせください。

MA2 Gallery
東京都渋谷区恵比寿3-3-8
12:00-19:00 開廊
月曜、火曜は休廊
tel:03-3444-1133
www.ma2gallery.com

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