mats gustafson

マッツ・グスタフソンとの恵比寿での1時間。 11 JUN. 2012

PHOTO TOHRU YUASA(B.P.B)
TEXT HIGH FASHION
DRAWINGS COURTESY OF THE ARTIST AND MA2GALLERY

マッツ・グスタフソンは、スウェーデン出身の偉大なイラストレーターだ。80年代から90年代にかけて、ファッションイラストレーションの分野で独特なタッチで一世を風靡した後、ポートレートやヌードに始まる作家的な活動を開始、アート界でも高く評価されている。そのマッツが、東京での展覧会「Trees and Rocks」(MA2 Galleryにて、4月14日〜5月27日まで開催)のために23年ぶりに来日した。
今回の展示作品は、樹と岩のみ。余計なものをすべてそぎ落とした静かな作品について聞く前に、まずはファッション・イラストに関する質問から始めた。

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トップの写真は、来日したマッツ・グスタフソン(右)と、今回展示した作品より。「ROCKS-Blue Rock 」(38×48cm water color)。 上は、MA2 Galleryでの展示風景より。左より、「TREES-Winter」(50.5×37.5cm  water color)「TREES-Winter」(63×49.5cm water color)、TREES -Maple(55×38.5cm water color) courtesy of the artist and MA2Gallery(以下すべて)

マッツさんがファッション雑誌に登場するのは、イタリアン・ヴォーグからですか?

マッツ・グスタフソン(以下G)私のファッションイラストをいちばんたくさん掲載してくれたのは、イタリアン・ヴォーグで、編集長のフランカ・ソッツァーニには大変よくしてもらいました。でも、いちばん最初に仕事を依頼してくれたのは、フランスのマリ・クレールなんです。80年代の初めのことです。それから、今度は、フランカのお姉さんカルラ・ソッツァーニに頼まれて、ミラノブランドのロメオ・ジリの仕事をするようになりました。このブランドがとてもクリエイティブだった時代で、80年代の終りのことです。それから、カルラはロメオ・ジリを去って...。

ディエチ・コルソコモを開きますね。

G   そう。そのディエチ・コルソコモは、世界のファッションに大きな影響力を持つようになっていきますね。フランカとカルラの姉妹は非常にダイナミックで、イタリアのモード界を支配するのです。多分、いまだにそうでしょうね。

80年代のマリ・クレールに、その後のイタリアン・ヴォーグやフレンチヴォーグと、時代を代表するモード誌が、マッツさんを評価していったというところもすばらしいですね。
ところで、ファッション・イラストレーションと言うと、歴史的に見ると、ルネ・グリュオーとか、アントニオ・ロペスとか、写真の代わりになるような写実的な絵が多かった気がします。ところが、マッツさんのタッチは全く違って、ある意味抽象的です。マッツさんは、どういう経緯でファッション・イラストレーションの世界に登場なさったのか、そもそもどうしてファッション・イラストレーションを描こうとなさったのか、そのあたりのお話を聞かせてください。

G  実は、私はファッションの勉強はしていないんです。ストックホルムの大学で演劇のステージデザインの勉強をしました。が、それでは仕事がないので、仕事のために、ファッション・イラストを描き始めたのです。ファッションはもともと好きでしたので。自己流のやり方です。そして、その絵を英国ヴォーグに持っていった。70年代の終わり頃でしょうか。彼らはすぐにそれを掲載してくれたのです。これがスウェーデン国外での初めての仕事になりました。彼らは、いろいろなコネクションを紹介してくれて、だんだんこのファッション・イラストレーションという不思議な仕事を始めることになったのです。
ルネ・グリュオーやアントニオ・ロペスのことをおっしゃいましたが、まず、ルネ・グリュオーは私よりずっと上の世代で、1940年代から50年代に活躍した人です。アントニオは、やはり私よりは上ですが、彼のイラストレーションはよく見ましたし、インスパイアされることも多かったです。ストックホルムに住んでいる時、彼に会いに行きました。実はグリュオーにも会ったんですよ。既に90歳を超えていましたが。ミュンヘンに、ファッションドローイング専門のバルチュ&シャリオー(Bartsch& Chariau)という名前のギャラリーがあるのですが、ここを通じて、グリュオー氏に会うことができたのです。マスターともいえるルネ・グリュオーやアントニオ・ロペスというすばらしい名前とつながることができて、本当に誇らしい気持ちでした。
そして私は、ニューヨークに移って,だんだん売れっ子になり、ずっと現在まで、このイラストレーターという職業に携わることになったのです。もう30年になります。80年代初めからはアメリカン・ヴォーグの仕事もして、90年代になってからは、ハーパース・バザーも少しやりました。

それは、ファビアン・バロンがバザーのアートディレクターの頃ですか?

G  その通り。どの仕事を引き受けるかというのは、アートディレクターや編集者が重要なんです。ですから、その人が他の雑誌に移れば、カメラマンやスタイリストも移り、一緒に私も移るというわけです。

では、アートディレクター、もしくはエディターであなたの仕事を一番理解していたのはだれでしょう?

G  やっぱり、フランカ・ソッツァーニですね。彼女は、写真家を始めとするアーティストたちと非常に強力なコネクションを持っていました。そして、彼女は、私をどう使うのがいいのか、どうすれば最良の結果を引き出せるかをわかっている人でした。いつも私が興味を持つようなテーマを考えて仕事を依頼するのです。

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左から、「Yohji Yamamoto」(Vogue Italia 1996 watercolor)、「Comme des Garçons 」(Vogue Italia 2005 watercolor)、「Alexander McQueen 」(Vogue China 2009 watercolor)

すばらしいですね。ところで、マッツさんは、ファッション・イラストを描く時に、ファッションショーを見るのですか、もしくは実物をご覧になるのか、それとも既に撮られた写真を使うのか、あるいは、絵のためにわざわざ写真を撮るのか、どれですか?

G  私は長い間、パリコレを見るため、何度もパリへ行きましたが、たいていはエディターがどのコレクションを見るかをセレクトします。モデルを使って、スケッチするというやり方をとっていたこともありますが、それは時間がかかり過ぎる。ついで、写真----いわゆるランウェイの写真を使った時代があり、今は、ビデオですね。インターネットを使って、ショーの翌日にはだれでも動画を見ることができる、という風に、大きく変わってきました。

少し前、チャイナヴォーグにお描きになったアレクサンダー・マックイーンのドレスの絵、あれはどういう経緯で?

G  あれは、イタリア人の中国セクションを担当しているエディターからの依頼なんです。以前からイタリアン・ヴォーグで一緒に仕事をしてきた編集者で、彼女と組んで、チャイナヴォーグの仕事を何度かやりました。
あのマックイーンの絵には、特別なストーリーがあるんです。ナタリア・ヴォディアノヴァという有名なロシア人のモデルがいますが、彼女がロシアの貧しい子供たちのためにチャリティをすることになった。マックイーンやプラダ、カルバン・クラインなどに依頼して、ドレスを、1点だけ特別にデザインしてもらい、それをオークションにかけて、売り上げを寄付するというものでした。服が完成する前の仕事ですから、実物はなく、各デザイナーから届いたデザイン画をもとに描かなければならなかったのです。

その後、マックイーンは自殺しますが、その前にあの絵をお描きになったんですね。

G  そうです。彼とは全くコネクションは持っていませんでしたから。

マックイーンの作る服というのは、非常に自己主張が強くて派手な服が多いと思うのですが、あれは、違いますよね。非常にそぎ落とされていて、エッセンスだけになっている。そして後ろ姿で、暗闇の中に吸い込まれて行くような、なにかこの世から消えていくことを暗示しているような。

G  そういえばそうですね。あれは私のビジョンなんです。ただし、このチャイナヴォーグの仕事はとても例外的なケースで、いつもはそんな風にはしていません。

おもしろいですね。絵を描く人の気持ちとは別に、見る側はいろんなものを読み取ってしまうんですね。

G  私は、制作する時には、いつも単純化し、そぎ落として行きますが、言ってみれば、マックイーンのような天才的なデザイナーの創作を翻訳しているような気がします。いつも自分の流儀でしか見ることができませんが、時にそれはうまく行くし、そうでないこともある。でもそれが、私のメソッドですし、私のものの見方なのです。

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MA2 Gallery での展示風景より。岩を集めたコーナー。中央左は、「ROCKS -Yellow Rock」( 56×38cm water color)

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