J.W. ANDERSON

J.W. アンダーソンが目指す究極のモダニティとは。 18 APR. 2013

PHOTO NORIFUMI FUKUDA(B.P.B.)

 ファッションを代表する都市の中でも、未来のモードを牽引する新進気鋭のデザイナーが生まれると言われる街、ロンドン。ここ数年は、かつてアレキサンダー・マックイーンやフセイン・チャラヤンがコレクションを発表していた1990年代後半から2000年代初めのような盛り上がりを見せている。現在のシーンを代表するブランドに挙げられるのが、5年前に彗星の如くに現れたJ.W. アンダーソンだ。自身のコレクションでは既存のユニセックスあるいはジェンダーレスという概念を打ち破り、レディスとメンズの境界を越えたデザインとフォルムを具現化し、世界中から注目されている。デザイナーはジョナサン・ウィリアム・アンダーソン。ここ日本でも、ドーバー ストリート マーケット ギンザではJ.W. アンダーソンのコーナーが展開されており、3月に来日した彼はその美しくスマートな風貌と飾り気ない気さくな人柄で日本のファンを魅了した。小春日和の銀座で、昼食を食べながら彼のクリエーションの魅力を探るべく話を聞いた。

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インタビューは、ドーバー ストリート マーケット ギンザの7階にあるローズベーカリーで行われた。写真の料理は、トーストの上に特製ソースが乗ったエッグベネディクト。トップの写真は、ジョナサン・ウィリアム・アンダーソン。

どのような少年でしたか。ファッションに目覚めた時のことを覚えていますか

ジョナサン・ウィリアム・アンダーソン(以下 アンダーソン)  スポーツが好きなごく普通の少年で、ドラマを見るのも好きでした。あまりお喋りなほうではなかったと思います。『サンデー・タイムズ』という新聞で偶然目にしたアレキサンダー マックイーンのコレクション(1999-2000秋冬シーズン、テーマはTHE OVER LOOK)の写真があまりにも印象的だった。ロンドンのファッションシーンにおいて、それが最初の強い衝撃だったことを今でも覚えてるよ。

ニューヨークで演劇を学んでいたと聞きましたが、後にファッションの世界へと方向転換したきっかけを教えてください。芝居とファッションデザインの間に共通点はありますか。

アンダーソン  ニューヨークで演劇を学んでいた頃のことですが、シェイクスピアの作品を題材にしたプロジェクトで、親しい友人が衣装を担当していたので手伝っていたらそのプロセスが面白くて。演じることよりも衣装を手がけるほうが楽しくなってしまったんです。イギリスに戻ってロンドン・カレッジ・オブ・ファッションに入学し、セルフリッジズなどのデパートでビジュアルマーチャンダイザーとして働く中、ファッションのイメージを作り上げていく楽しさを見い出しました。芝居での経験は、実はデザイナーの仕事にとても役立っています。演劇と同様にファッションにもパフォーマンスの要素があるし、演技でそのキャラクターの人柄や人生を表現するように、ファッションでは3ヶ月、あるいは6ヶ月ごとにキャラクター(コレクション)を作り上げているのですから。

映画、音楽、アート、本などからも影響を受けることはありますか。

アンダーソン  昔の映画もいいけど、ロマン・ポランスキー監督の「ローズマリーの赤ちゃん」(1968年)、スティーブン・ダルドリー監督の「めぐりあう時間たち」(2002年)、それからドキュメンタリー映画の「グレイ・ガーデンズ」(1975年)といった映画が好きです。映画自体をクリエーションに反映させるようなことはしないけど、ファッションも映画と同じように別の世界にエスケープできるものだと考えています。だから映画とファッションは表現方法こそ違うけど、アプローチは同じだと思う。本は何でも好き。写真集も、小説も、ドキュメンタリーも、ガーデニングの本も。本当に何でも読むし、ジャンルを問わないブックコレクターなのかも。好きなジャンルを選べって言われたら困るな。

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自身のルーツやカルチャーについて語るジョナサン・ウィリアム・アンダーソン。

2008年にメンズコレクションを、'10年にレディスコレクションをスタートしましたが、クリエーションを「ジェンダーレス」と形容されることについてどう捉えていますか。

アンダーソン  興味深いのは、僕自身はクリエーションにおいて最初からジェンダーにチャレンジする必要はないと思っていたということ。人々は「変化」を経験するため、あるいは自分を変えるために洋服を着るのだからジェンダーに重点を置くべきではありません。ただ、女性がどのような洋服を選んで着るのかという、女性と服との関係性はとても興味深いと思います。1990年代に入って男性と女性の社会的性差はほとんどなくなってきています。かつて女性と男性のそれぞれのものと見なされていた役割も交換したって構わない。ジェンダーはユニバーサルになってると思うし、時代と共に進化するものだと思います。確かに男女では骨格や体格が違うから、服のプロポーションが異なるのは自然なこと。けれどその形に縛られず、僕の目から見たプロポーションラインに置き換えて、新しい形を作っているだけのことなんです。

あなたの提示するジェンダーレスあるいはユニセックスなクリエーションは、今シーズン(2013-'14秋冬コレクション)のキーワードとして挙げている「ハイパーノーマル」や「ニューノーマル」に言い換えられるのでしょうか。

アンダーソン  現代女性たちにとってキャリア同様にファッションも重要で、女性たちはレディスの服だけではなくメンズの服も着ます。だから彼女たちにとってメンズの服も年々重要になりつつあるし、同時に男性も女性の洋服を着たって構わない。モード史においてまったく新しいことが今起こり始めています。歴史というのはその時代ごとに特徴があるけど、まさに新しい時代に入る転換期に僕たちはいると思います。若手デザイナーたちもその意味を見出しているし、現在のクリエーションに関わる意義や責任をも感じていると思います。僕たちは新たなる世代とモードを構築するまさにチャレンジピープルでありエキサイティングピープルだと思う。
今シーズンのコレクションに関して言えば、僕にとって「ハイパーノーマル」や「ニューノーマル」とは、未来に何がもたらされ、次に何を期待されるのかということ。それを知るためには、まず僕自身を。そして僕が何を求めるのかを認識することだと考えました。そういう意味で今回はパーソナルな、J.W. アンダーソンというキャラクターを表現するためのコレクションでした。テキスタイルがクリエーションのベースになるので、今回はできるだけ素材に意味を持たせず抽象的なものにしたかったのです。一部に高機能ナイロンがあるけど、ほとんどはレザー、ウール、コットンのようなごく一般的な素材をセレクトしました。
一体何がその人にとってのノーマルなのか。「ノーマル」は人それぞれ解釈が異なります。人々のライフスタイルにも常に新しい方向性があるけど、僕はデザイナーだからファッションにおいてはフォロワーではなくリーダーでなくてはなりません。そういう意味で、川久保玲さんはモダニティがあってデザイナーとして究極のモデルだと思います。僕がここ(ドーバー ストリート マーケット ギンザ)でどれだけインスパイアされているか。彼女が何を信じていて、次に来るノーマルが何なのか。その答えのすべてがここにあります。だからこそ彼女はエキサイティングであり、メジャーなのだと思う。

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2013-'14秋冬メンズコレクションの写真を見ながら話すジョナサン・ウィリアム・アンダーソン。

あなた自身が客観的に見た場合、J.W. アンダーソンをどのようなブランドだと思いますか。

アンダーソン  何か新しい。ハイコンセプトでベーシックなブランド。 何か一つでも新しいアイディアを見つけられたらそれだけでそのシーズンは大成功。コレクションには、J.W. アンダーソンがどこへ向かっているのかを伝えるメッセージを含ませたいと思っています。だからこそ、常に「NEW」な何かを含ませたい。新しいポケットなのか、カットなのか、プロポーションなのか、常に新しい何かを探しています。ファッションはやり続けなければならないし、「SOMETHING NEW」を与え続けなければそれはファッションとは言い難いとさえ思うんです。
一方で、コレクションは1シーズンで完結するものではなく、メンズレディスの枠やシーズンを越えてリンクしています。例えば、2013-'14秋冬メンズコレクションで話題になったショートパンツのフリルも、前シーズンのレディスにあったフリルを引き継いでいるんです。カラーパネルやモチーフも同じです。デザインは繋がっています。デザイナーはアイディアの使い捨てではなく、アイディアの一つ一つを育み、より発展的な形にするべきです。そう考えればコレクションが繋がっているほうがごく自然でしょう。そこにいかに「NEW」を加えられるのかが僕にとっての挑戦です。

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左の2枚は、フリルのついたショートパンツが印象的な2013-'14秋冬メンズコレクション。右の2枚は、フリルがトップとスカートに大体に施された2013春夏ウィメンズコレクション

あなたのクリエーションの糧となっているのものは何ですか。

アンダーソン  僕はロンドンだけに向けてデザインをしているわけではなく、世界に向けたグローバルなデザインを試みています。だからデザイナーとしてムードだけに囚われるわけいはいきません。だからこそ世界を旅した時に新しいものやヒントを探すようにしています。その国のテレビも見るし、いろんな所に行ってみる。そこに何かしら新しい発見があるから。今回の来日では、東京の銀座や原宿で出会った人たちや道行く人たちのスタイルに新しいプロポーションの手がかりを見つけられたように思います。去年行った上海も刺激的でした。ハイパーラグジュリーとリアリティのミックス。未来的に進化した部分と時が止まったような部分の強いコントラスト、何より街が持つ圧倒的なエネルギーは凄まじくハプニングの連続がそこにありました。
デザイナーはスポンサーの問題もあって、以前とは変わらざるを得ない状況にあります。現実的に、人々が着用してこそ服の存在意義があるし、ファッションはデザイナーのためではなく人々のためのものです。想像してみてほしい。コンサートに行った時、ミュージシャンがいくら素敵なコスチュームを着ていたとしても、それが過度にミニ丈だったり露出が多かったり、装飾が過ぎるものであれば、それは日常生活で体にまとう服としてはリアリティが無さ過ぎる。コスチュームではファッションにならないんです。だからこそクリエーションの大前提として常に着る人がいるから、リアリティを持たせるべきだと僕は考えています。
だけど次世代を思うと少し不安にもなります。それはコミュニケーションの問題かな。僕には21歳の妹がいるんだけど、彼女の生活を見ているとリアリティの中で人間関係を育まず、コミュニケーションの手段はもっぱらSNS(ソーシャルネットワークサービス)。それは時として便利なのかもしれないけど、ソーシャライズが無くなってしまうということは恐ろしいことだと思う。なぜなら、その時々の人々の感情に触れるような「体験」になるのもまたファッションだから。一定のフラットなものでもなければ、フォーマットにはまるものでもなく、日々変化して行くもの。今後も「感性に響く」ことこそがファッションになっていくと考えています。

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左は、ドーバー ストリート マーケット ギンザに並んだJ.W. アンダーソンの2013春夏コレクション。中上は、ラウンドカラーが特徴的なシャツ。中下は、膝丈のプリーツスカート。右上は、フリルのついたスカート。右下は、セーラーカラーのトップ。4つのアイテムはすべてコットン。

DOVER STREET MARKET GINZA
東京都中央区銀座6-9-5 ギンザコマツ西館
11時〜20時営業(土・日は21時まで)不定休
tel.03-6228-5080
www.doverstreetmarket.com

J.W. ANDERSON

ジョナサン・ウィリアム・アンダーソン
1984年北アイルランド生れ。アメリカで演劇を学び、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションでメンズウェアを専攻。在学中からブラウン トーマス、セルフリッジズなどのデパートでビジュアルマーチャンダイザーの経験を積む。2009年、ロンドン・ファッションウィークの期間中にメンズコレクションを発表しデビュー。さらに'10-'11秋冬コレクションからレディスをスタート。また'10年には英国の老舗ブランド、サンスペルのクリエーティブディレクターに就任。ブランドを見事に再生させその手腕は高く評価された。また'12-'13秋冬コレクション、'13春夏コレクションと続くトップショップとのコラボレーションも成功を納めており、そのクリエーティビティとビジネスセンスを持ち合わせた、ロンドンを代表する新世代のデザイナーとして注目を集めている。j-w-anderson.co.uk


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