JONNY JOHANSSON

ファンタジーとリアリティを融合した北欧のブランド。 22 DEC. 2012

PHOTO TOHRU YUASA(B.P.B., PORTRAIT)
TEXT MAYA NAGO

 スウェーデン発のクールなデニムブランドから、世界的なイットブランドへと成長を遂げたアクネは、現代に求められるファッションを最もリアルに、かつ斬新に体現するブランドだ。そのアクネの日本第一号店が、12月14日、ついに東京・青山にオープンした。これに合わせて来日したクリエーティブディレクターのジョニー・ヨハンソンに、彼にとってのファッションとは何か、アクネとは何かを聞いた。

JONNY JOHANSSON
写真は、「アクネ ストゥディオズ アオヤマ」のオープニングレセプションの模様。ショップを埋め尽くすたくさんの関係者が訪れた。トップは、クリエーティブディレクターのジョニー・ヨハンソン。

待ちに待った東京店がオープンしました。オープンが噂され始めてからしばらく経っているだけに、周囲からのものすごい期待を実感されていると思いますが、いかがですか?

ジョニー・ヨハンソン(以下 ヨハンソン)実際のところ、過度に期待されるのは好きじゃないんです。高まり過ぎた期待に答えるのは容易なことではありませんから。

アクネのショップ空間は、スウェーデンのストックホルムやパリなど、それぞれに異なる趣向が魅力です。「アクネ ストゥディオズ アオヤマ」では、どんな点にこだわりましたか?

ヨハンソン  ブランドを始めた当初、東京はアクネにとって、とてもビジネス展開し易いマーケットだと思い込んでいました。というのも、スウェーデンと日本には、あくまで建築的な観点ではありますが、多くの共通点がありますから。けれども、この街をきちんと理解するには予想以上に時間が掛かりました。だから遂にオープンできたのは、本当に嬉しいことです。東京のショップは、国内外からこの街に集まる人々にとって、最終目的地になればいいなとの想いを込めました。訪れた誰もが安らぐことのできる空間にしたかったので、建物の中に、モダンなスウェーデンの家を造るというコンセプトでデザインしました。

あなたが考えるスウェーデンと日本との共通点とは、具体的に、どのような点が挙げられますか?

ヨハンソン  建築でいうと、木やコンクリートなどの素材使いもそうですし、デザインという意味では、単なるシンプリシティという言葉では括ることのできない純粋さがあると思います。また思想的にも、ともに自然に根ざした考えかたが浸透していると理解しています。歴史や伝統を重んじると同時に、とても進歩的な考えも持っているという点でも、共通しているのではないでしょうか。

そういう意味では、普遍的であるという意味でのクラシックと、とてもクリーンな現代性が融合しているのが、アクネのデザインの魅力でもあると思います。

ヨハンソン  そうですね。私たちが生きている時代は、すべてが「現在」で成り立っているわけではありません。この時代というのは、歴史と新しいものが出会ってできているのです。素晴らしい歴史や伝統があるのに、それを上手く取り入れないなんて、私には到底考えられません。私のデザインにとって、それはとても重要なことです。

それでは、スウェーデンというバックグラウンドは、アクネにとってどのような意味を持ちますか?

ヨハンソン  私はスウェーデン人であり、スウェーデンで生まれ育ったので、当然、この国から多大なる影響を受けています。私がミニマリストというよりも機能主義者で、とても直接的であるのも、その一つでしょう。一方で、とてもローカル=スウェーデン的であると同時に、非常に国際的な考えを持っているとも自負しています。世界は今後、もっと多文化的になるでしょう。私自身、そういった場所に強く惹きつけられます。2、3年前、休暇でモロッコのマラケシュを訪れたのですが、このマラケシュという場所はイヴ・サンローランが愛した場所としても知られていて、ファッションの世界において、ある意味、とてもセンシティブな場所だと捉えていました。でも実際に訪れてみると、ニューヨークとは当然趣は異なるものの、同様に多種多様な人種や文化が入り交じる場所でもあることに、とても驚き、魅了されました。私はいつも、そういった多様性に惹かれるんです。そこにローカルな視点、つまり、自分に誠実な視点が組み合わさったときに、面白い表現が生まれるのではないかと考えます。

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「アクネ ストゥディオズ アオヤマ」の1階のウィメンズのフロア。光沢感のある美しい石を使った壁や床と、むき出しのコンクリートの柱のコントラストが斬新。

あなたはファッション以外にも、音楽や映像など、さまざまなクリエーティブメディアに携わってきたと思います。ファッションとそれらは、アクネという概念の中で、どのようにリンクしているのでしょうか。

ヨハンソン  それが、以前はミュージックビデオのディレクションやコンサルタントもやっていましたが、今はほとんどやっていません。クライアントが私たちに望むことと、私たちがオファーできるものの間にある溝を埋めることができなかったので、正直、妥協の連続だったんです(笑)。しかも私は、コンサルティングができるほど知的な人間ではありません。それに比べて、ファッションは自分にとって、とても相性の良いメディアだと思います。

というと?

ヨハンソン  私にとって、ファッションは自己表現のひとつです。ファッションには制約も多いのですが、その制約があるからこそ、よりクリアなビジョンを得ることができると私は考えています。ファッションに対する自分の視点というものは、とてもパーソナルなものであり、誰かに邪魔されるものではありません。さまざまなメディアに関わってきて、今、はっきりと言えるのは、ファッションこそ、自分がいちばん心地よく、そして矛盾なく、理解を深めることのできる表現手段であるということです。表現をするという行為において、僕にとってとても重要なのは、自分に誠実でいられるかどうか。その意味で、ファッションは私に最もフィットしたメディアだと思います。

デニムから出発したアクネは、今、パリとロンドンでコレクションを発表するファッションブランドになりました。今も昔も変わらないのは、コレクションの基軸には常に「リアリティ」があることだと思いますが、いかがですか?

ヨハンソン  ブランドを立ち上げた当時、私たちは、モダンなファッションブランドを築き上げたいと考えていました。そして、人々にとって最も重要な衣服とは何か、世代を超えて愛される衣服とは何かを考えた結果、ジーンズに行き着いたんです。ジーンズは、私にとっても、最もリアルな衣服です。私はクチュールに囲まれて育ったわけではありませんから。そうしてアクネは、ファッションにおける独自の位置を築いてきたと思います。

ファンタジーとリアリティを融合させるというアイディアですね。

ヨハンソン  その通りです。ある意味、究極の表現メディアではないでしょうか。

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上の写真は、ロンドンで発表されたアクネの2013春夏ウィメンズコレクションのバックステージより。今コレクションでは、「音楽」、「コラージュ」、「ニュー」といったデザインのプロセスを通じて、コレクションを表現したという。

ではアクネという特異なブランドを、あなたはどう定義づけていますか?

ヨハンソン  アクネはいわゆるプレタポルテブランドでも、ストリートウェアブランドでもありません。今の消費者にとって、プレタポルテブランドかストリートウェアブランドかというようなカテゴライズは、まったく無意味だと思います。あえて定義するならば、「モダン・ファッションブランド」でしょうか。モダン・ファッションブランドに必要なこととは、すべてがそろっているということです。消費者の方々の興味をそそる面白味があり、その服を着ることで、自分らしさを表現できる服、それが、私が考える「良い服」です。そう、誰もが自由に取り入れ、自分を表現できるという点も、ファッションの面白さの一つですね。つまり、他の芸術表現が持ち得ない「気軽さ」があるのです。

そして、プライスポイントもアクネにとってはとても重要ですね。

ヨハンソン  ファッションが好きな人たちの誰の手にも届きやすいものであるということは、アクネにとって、必要不可欠なコンセプトです。排他的ではないブランドでありたいのです。ファッションの興味深いところは、デザイナーである私が提案し、着る側であるあなたがたがクリエイトできるという点です。私が思い描いていた理想のアクネ像を実現するという意味で、今、私たちは、ようやくその道のりの半分に到達したところです。この旅は、まだまだ続きます。実現できていないこと、実現するために足りていないこと......、たくさん乗り越えなければなりません。完成するには、もっと時間がかかりますが、今私は、この過程をとても楽しんでいますし、やりがいを感じています。

では、あなたが今後目指すところを教えて下さい。

ヨハンソン  アクネは今、15年に渡る序章がついに終了して、新しい章が始まったばかりです。私自身、自分の強みが何であるのか、どうすれば、その強みを生かすことができるのかが、ようやく分かり始めたところです。それを考え、実現していくことが楽しくて仕方がありません。

では最後に『アクネ ペーパー』について。ビジュアルもさることながら、とても質の高いテキストが多数掲載されているので、日本語訳があればいいのに......と常々思っているのですが。

ヨハンソン  本当にそうなんです。興味深い記事がたくさんあるので、日本の皆さんにも読んでいただけるよう、大変な作業ではありますが、翻訳することも考えなければと思っています。『アクネペーパー』を作ったのは、私たちのインスピレーションの源、つまり、ファッションの文化的な側面を広く紹介したかったからです。ファッションとは、開かれたメディアであり、より広義に捉えることができると思うのです。

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写真は『アクネ ペーパー』の最新号(14号)。左の表紙に写る人物は、ソ連出身のバレエダンサーであるミハイル・バリシニコフ。右はスティーブン・マイゼルのアーカイブを使ったビジュアルページ。2005年から年2回のペースで発行されている『アクネ ペーパー』は、大判の判型を活かしたダイナミックなページ構成が魅力のビュジュアルマガジン。 「アクネ ストゥディオズ アオヤマ」でも発売中。
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写真は、「アクネ ストゥディオズ アオヤマ」の内観。「house within the store」をコンセプトにしたショップは、3フロアの構成。スウェディッシュハウスをイメージし、木や石、ニューエイジストーン(天然石)を用いた、モダンな空間に仕上がっている。上段左は、2階のレディスを扱うフロア。右は、美しい色合いの石を使った壁。下段左は、レディスの洋服やアクセサリーが並ぶ1階。右は、メンズウェアとデニムの地下のフロア。

ACNE STUDIOS AOYAMA
東京都港区南青山5-3-20
11時〜20時営業 不定休
(12月30日は18時まで、31日と1月1日は休み)
tel.03-6418-9923
www.acnestudios.com

JONNY JOHANSSON

ジョニー・ヨハンソン
スウェーデン生れ。軍人の父と芸術家の母のもと、幼少期はバンド活動に夢中だったという。高校を卒業後、美術大学への進学を希望した母を押し切り、独学でデザインの仕事をスタート。その後、インテリアデコレーターを経て、1997年、3人の友人とストックホルムにアクネ ストゥディオズを設立。「Ambition to Create Novel Expression」(新しい表現を生み出す野望)をコンセプトに、クリエーティブ集団として活動。同年、ファーストコレクションとなる5ポケットのジーンズを製作し、'98年、アクネのフルラインアップのコレクションを発表。2003年には、同都市に初の旗艦店をオープン。'05年に刊行したビジュアルマガジン『アクネ ペーパー』や、ファーニチャーストアのスヴェンスクテンのコラボレーションも話題を集めるなど、他分野でもその才能を発揮。現在は、メンズをパリで、レディスをロンドンでコレクションを発表し、世界の600以上の店舗で販売されている。
JONNY JOHANSSON

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