CREATURES OF THE WIND

日本と世界が繋がるものづくりの在りかた。 15 MAY. 2013

PHOTO ATSUSHI OKUYAMA, NORIFUMI FUKUDA(B.P.B.)

 今年70周年を迎えた三陽商会が、スローガンである「TIMELESS WORK」を具現化するニュータイプのカプセルコレクションを発表した。ジャケットとコートからなるこのコレクションは、シェーン・ガビエとクリストファー・ピータースが手掛けるニューヨークの新進ブランド、クリーチャーズ オブ ザ ウィンドを起用し、「CREATURES OF THE WIND + SANYO」と名づけられた。意外な組合わせとも言える両者を結びつけたのは、数々のブランドを手掛けるニューヨークのパターンメーカー、大丸製作所2の代表を務める大丸隆平。生産は、高い技術力を持つ三陽商会の国内工場の一つ、岩手サンヨーソーイングが担当。デザイン、パターン、生産のプロがタッグを組んだこの取組みは、三者がそれぞれのポジションで最大の能力を発揮したときに生まれる化学変化=コラボレーションの新たな形であり、これからの時代を生き抜く新しいビジネスモデルとしての提案でもある。この発表に合わせて来日した、クリーチャーズ オブ ザ ウィンドの二人と大丸に話を聞いた。

CREATURES OF THE WIND
カプセルコレクションのロゴマーク。日本を代表するアートディレクターの一人である浅葉克己が、1971年にデザインした三陽商会のロゴを使用。トップの写真は、今コレクションの生産を手掛ける岩手サンヨーソーングでクリーチャーズ オブ ザ ウィンドの二人と大丸が工場のスタッフたちと撮影した一枚。最前列の左から4人目が大丸。その右がクリーチャーズ オブ ザ ウィンドのクリストファーとシェーン。

今回のコラボレーションが意図したこととは何でしょうか?

シェーン・ガビエ(以下 シェーン)  2012春夏コレクションから大丸製作所2にパターンの制作を依頼してきました。彼らをとても信頼しているので声を掛けてもらって嬉しかったです。三陽商会のことは以前から知っていて、自社工場が持つ高い技術力とクオリティ、伝統的なクラフトマンシップに興味があったので今回のプロジェクトに参加することを決めました。

大丸隆平(以下 大丸)  僕らの活動のベースに「もの作りを通して新しいことをやりたい」という考えかたがあり、それがあらゆるプロジェクトの原動力になっています。今のファッション業界で「コラボレーション」は過剰なほど展開されていますが、一般的なコラボというのは大企業と新進気鋭のデザイナーの組合せだと思います。例えば、高価なアイテムがコラボしたものなら手頃な価格で買えるというものばかり。そういったことではなく、もっともの作りにフォーカスしたものができないかと考えていました。そんな時、伝統があって真摯なもの作りをしている三陽商会と新しい企画の検討をしていて、アメリカのブランドの中でも際立って斬新なアイディアを持っているクリーチャーズ オブ ザ ウィンドを推薦しました。ある意味、対極の両者が出会ったら面白い相乗効果が生まれる予感がしたんです。根本に「ものづくりが好き」という共通点があり、正反対の場所にいるからこそ、お互いが意図するところを越えて、本当に新しいものが生まれる。そんなコラボレーションが実現できると思いました。

今回のカプセルコレクションについて教えてください。クリーチャーズ オブ ザ ウィンドならではの異素材のコンビネーションやレイヤードは健在ですが、全体の印象はぐっとシックになり、色やフォルムもシャープでエレガントですね。

クリストファー・ピータース(以下 クリストファー)  僕たちは二人でデザインをしていますが、具体的な役割分担はしていません。例えば、コンセプトを考えたり、デザイン画を描くこともすべて二人で行っています。僕らがその時点で感じたり惹かれる空気感、ムード、音楽、ストーリー、感情がデザインに繋がっていきます。まずコンセプトにあるアイディアをディスカッションしながら発展させていき、そこからお互いにデザインを出し合います。今回は、ニューヨークだけでなく世界が社会的に不安定な状況だからこそ必要とされている「強さ」や「タフさ」をコンセプトにしました。三陽商会の縫製技術を使えば美しいジャケットやコートに仕上がる確信があったので、思い切ってメンズウェアの要素やテーラリングを女性らしさと融合した、実験的でチャレンジングなコレクションになりました。重視したのは、服の強いインパクトと機能性、そしてコマーシャルであること。服はそのものが個性ではなく、着てもらってこそ初めて人の個性となり得るから。そこに僕らがデザインをする意義があると思います。

今年の2月7日、ニューヨーク・ファッションウィーク期間中に発表されたクリーチャーズ オブ ザ ウィンドの2013-'14秋冬コレクションの映像。このショーの中で「CREATURES OF THE WIND + SANYO」のカプセルコレクションも発表された。

今回のカプセルコレクションでは、クリーチャーズ オブ ザ ウィンドと三陽商会、大丸製作所2はどのようなプロセスでクリエーションを進めたのでしょうか?

大丸  クリーチャーズ オブ ザ ウィンドの場合は、パターンだけではなく、マーチャンダイジングにも関わっています。通常のコレクションの時から彼らの創造性と僕らの技術力をコラボレーションしているので、一緒にもの作りをしている仲間のような感覚です。パタンナーとしてたくさんのブランドと仕事をしているのですが、デザイナーとのやり取りの中で、デザイン画にはこうあるけど実際にパターンを作成していくと、ここは2センチ広げたほうが美しくなるのにと感じることがあります。そういう時に「必ずデザイン画のままにしてほしい」と頑なに主張するデザイナーもいますが、クリーチャーズ オブ ザ ウィンドの二人はとても柔軟で、人の意見を積極的に聞いてくれるので、異なる意見や創造性も取り入れながら一緒にもの作りができるんです。だからこそ、お互いのイメージを遥かに越えるものができる場合もあります。クリエーションはデザインと技術と縫製のコンビプレーなんですよね。

シェーン  僕たちはデザイン画だけをポンと渡して後はよろしく! というタイプのブランドではありません。デザインになる前のアイディアレベルから三陽商会とも大丸製作所2ともイメージも含めてたくさん話をしました。大切なことはコミュニケーションであり、そこから生じる信頼関係だと思います。特に僕らのデザイン自体がフィーリングから派生しているものだから、僕らの思いと三陽商会の美しくハイクオリティな縫製、大丸製作所2のパターン技術が融合してこそ形になるのだと思います。特にパーツやライン、ディテールに落とし込むときにはかなり密なコミュニケーションを心掛けました。それぞれの立場から見たエレガントさ、強さ、クオリティを共有できるベストな関係ですね。

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カプセルコレクションは、1950年代から'60年代に掛けてイギリスで流行したサブカルチャーであるテディガールに、三陽商会のアーカイブから着想を得て製作された。左は、'66年のサンヨーコートの広告とデザイン画。右は、三陽商会の'64年のスケッチ(右の二枚)とデザイン画。

今回の企画は、日本のもの作り、ファッション業界が発展の可能性を感じさせる新たなビジネスモデルの一つだと思います。日本のもの作りの未来のために必要なことはなんでしょうか?

大丸  日本のもの作り、あるいは日本人として改めて素晴らしいと思うことは、親から子へ、先輩から後輩へと受け継いでいくものがあるということ。日本の「継承」という文化です。僕は一人の技術屋(パタンナー)として渡米したのですが、外から日本を見た時に洋服はもちろんですが、日本には受け継がれてきた貴重なものがあると気づきました。メイド・イン・ジャパンは世界に広げるべき価値があるのです。
しかし、残念なことに今の日本は「個」の社会になりつつある。だからこそ継承すべきものを僕らの世代がしっかり伝え、世界に広げる必要性があります。そのためにも、もの作りという概念だけに留まらず、ビジネスとして考えながら展開しなくてはなりません。アートではなくファッションビジネスとして。ニューヨークで感じることは、中国、韓国、イタリアといった国の人たちにはコミュニティがあってお互いのサポート体制が取れているけど日本人はその点が弱い。下手をするとライバルのような感じになります。個人プレーではなく、企業同士で補い合える関係を築いて新しいことをやっていきたいし、そういう環境を作って行きたいんです。とても当たり前のことですが、それこそが原点に帰るということだと思います。

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写真は、岩手サンヨーソーイングを見学するクリーチャーズ オブ ザ ウィンドの二人と大丸。この工場は、三陽商会の自社工場の中でも細部の仕様やさまざまな素材への対応が特に優れ、高い技術力を持つ従業員を多く抱えている。東日本大震災では工場のある岩手県下閉伊郡山田町も大きな被害を受け、約100名の従業員のうち約2割が今も仮設住宅に暮らしている。重要産業である縫製業を盛り上げようと町が一丸となって取組んでいる。

日本とアメリカの両国で発表された今回のプロジェクトを手掛けた印象と、今後への意気込みを教えてください。

クリストファー  東京ではテキスタイル会社や靴工場を見学し、岩手サンヨーソーイングで製品が実際に生産されている現場を訪ねました。すべての場所に歴史が詰まっています。三陽商会の財産とも言える膨大なアーカイブを見ただけでも新たな発見に繋がりました。その高度な技術を目の当たりにし、デザインにはまだまだ可能性があると感じています。

大丸  このプロジェクトを日本で披露するためにこの二人と一緒に来日しましたが、実はもう一つ大きな目的がありました。それは、彼らを生産の現場である、三陽商会の縫製工場に連れて行って実際に縫っている人たちに会わせることでした。自分たちがデザインした服がどのような人たちの手によって形になっているのか、逆に縫っている人たちにもその服をどのような人がデザインしているのか知ってほしかったのです。お互いを知ることで作品への影響や変わってくることがたくさんあると思います。クリエーションもビジネスも、最終的には人ですから。今回は7型しかありませんが、次回は表現力をもっと伸ばしていきたいですね。メッセージ性があり、作っている人の顔を思い浮かべることができるような展開を目指していきたいと思います。

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写真は、今回発表されたカプセルコレクションの一部。異素材のミックスを得意とするクリーチャーズ オブ ザ ウィンドならではのモダンなデザインに仕上がっている。左のコートは、ジャカードで斬新なグラフィックを描いた一品。すべて日本製の生地を使い、岩手サンヨーソーイングで縫製されている。日本では9月より伊勢丹新宿店のリ・スタイルとインターナショナルギャラリー ビームスなどで発売予定。
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クリストファー・ピータース、シェーン・ガビエ(クリーチャーズ オブ ザ ウィンド)
クリストファー(左から2人目)は、ニュージャージー州生れ。シェーン(左から3人目)は、ミシガン州生れ。共にシカゴ美術館付属美術大学を卒業。同大学で知り合い、2007年にクリーチャーズ オブ ザ ウィンドを設立。シェーンは、現在も同大学でファッションデザイン科の教授を務める。'11年、CFDA/VOGUEファッション・ファンド・アワードでファイナリストに選出され、'12年、CFDAスワロフスキー新人賞のレディス部門にノミネートされる。独特な色彩感覚と素材使いに特徴があり、その芸術性とクオリティの高さが支持を集めている。伊勢丹新宿店やロンドンのドーバー ストリート マーケットなど、百貨店やセレクトショップで取り扱われている。creaturesofthewind.com

大丸隆平(大丸製作所2)
文化服装学院の通信教育を受講した後、文化服装学院アパレルデザイン科を卒業。コム デ ギャルソンを経て、フリーのパタンナーとして活躍。2006年に渡米。ダナ キャラン ニューヨークでパタンナーを務め、'08年に大丸製作所2を設立。パターン外注代行の他、デザインコンサルティング、縫製、テキスタイル販売、エージェント業務なども手掛ける。多角的な視点からさまざまなブランドのクリエーションを支えデザイナーたちからの信頼も厚い。クライアントには、ラルフ ローレン、カルバン クライン、トム ブラウン、プロエンザ スクーラー、ジェイソン ウーなどが名を列ねる。写真の一番左は、ジェネラルマネージャーの永澤小百合。

お問合せ SANYO SHOKAI C.R.DEPT. tel.0120-340-460
www.facebook.com/CreaturesofthewindSanyo
www.sanyo-shokai.co.jp



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