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Mainichi

28th Mainichi Fashion Grand Prix 2010

'10年第28回毎日ファッション大賞。雑誌『ハイファッション』が特別賞を受賞。

2010.10.01 update | OTHERS

photographs:Norifumi Fukuda
(B.P.B.)

上の写真は、受賞者の記念撮影。左 株式会社エイガールズ代表取締役社長、山下雅生。左から2番目 AGURI SAGIMORIデザイナー、鷺森アグリ。中央2人 ミントデザインズ デザイナー、八木奈央と勝井北斗。右から2番目 株式会社バルス代表取締役社長、髙島郁夫。右 ハイファッション・オンライン チーフ・ディレクター、西谷真理子。

年間のファッション活動において最も輝かしい成果をあげたデザイナー、企業、団体に与えられる毎日ファッション大賞。去る9月21日、品川プリンスホテル、アネックスタワーにて2010年の授賞式が行われた。
第28回を迎えた今回の大賞は、デザイナー勝井北斗と八木奈央のブランド、ミントデザインズ。2001年に設立された同ブランドは、ファッションをプロダクトデザインの一つと捉え、東京らしい"可愛さ"と独特の"毒"を併せ持つオリジナリティ溢れる素材とプリントを駆使したクリエーションが特徴。東京コレクションでの活躍はもちろん、ミラノ・サローネ"TOKYO FIBER 2009"展での出品や"puzzling wall"と呼ばれる室内用壁紙のデザインなど、ファッションの枠にとらわれない感性と活動が高い評価を受け、今回の受賞に至った。
新人賞・資生堂奨励賞は、AGURI SAGIMORIのデザイナー鷺森アグリが受賞。凝ったハンドワークの独創的なマテリアルを用い、3年目とは思えない完成度の高いクリエーションが評価された。また、ファッション界の発展に長らく寄与した人(グループ)に送られる鯨岡阿美子賞は、高品質なジャージー素材で知られ、数多くのOEM(他社発注による生産)を手掛けるテキスタイルメーカー、エイガールズが受賞。話題賞では、雑貨、家具の専門店"Francfranc(フランフラン)"を全国展開する企業、バルスが受賞。家庭用品や生活雑貨に、ファッション性やアート性を加え、インテリアの価値観の向上を幅広い年齢層に訴求した功績が、大きく評価された。
そして、特別賞ではこのサイトの前身であり、今年4月に休刊した雑誌『ハイファッション』が受賞。1960年に文化出版局より創刊され、高級ファッション誌として世界最先端のデザイナー、コレクションを、50年にわたりプロフェッショナルな視点で紹介してきた本誌。今回は、「日本のファッションを牽引した先駆者的存在」「才能ある若手を発掘した功績は大きい」などの評価を受け、受賞に至った。なお、同賞の受賞は雑誌では初めてのこと。

Mainichi Mainichi 写真上は、ハイファッションの創刊号と休刊号となった2010年4月号。下は、プロダクトデザイナー、吉岡徳仁がデザインした毎日ファッション大賞のトロフィー。

以下では、長年ハイファッションに携わってきた編集者、西谷真理子(最終号時は副編集長、現在はhigh fashion ONLINEチーフディレクター)の授賞式でのスピーチを紹介する。

本日は、このような栄誉ある賞をいただきましたことを、とても光栄に思っております。

この賞は、なによりも、ハイファッションが、1960年に誕生して以来、半世紀にわたって、日本発信のモード誌として、独自の位置を保ちながら存在し続けたことへの評価であり、休刊を惜しむ声でもあり、もしかすると、ねぎらいでもある賞と受け止め、歴代の編集長と編集者に代わって、ありがたくお受けしたいと思います。

本来ならば、この台に立つべきは、これまでハイファッションの編集者であることを誇りに思い、編集の苦労をいとわず、その理念を守って来た人たちすべてであると思っています。

私は、現在、ハイファッション休刊後、オンラインという形で、新しいハイファッションの編集に携わっていますが、改めて50年を振り返ると、奇跡のような雑誌だった、としみじみと感じずにはいられません。

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おそらく、費用対効果を厳しく問う出版社ならば、ハイファッションなど、そもそもこの世に生まれなかったと思います。創刊号の編集後記に、時のハイファッション編集長であり、文化出版局長であった今井田勲は、こんな風に書いています。

ハイファッションが創刊した1960年当時、文化出版局の看板雑誌であった装苑の部数は数十万部にまで伸びていましたが、今井田局長は、戦後回復の兆しが見えて来た日本にあって、さらに上のランクのファッション誌が求められていると感じていました。それは、大衆向けではなく、1点ものの質の高い服が紹介できる媒体でした。これは単に高価な服を紹介するだけでなく、一流のデザイナーが高級素材を使ってデザインした服を、一流のモデルに着せて、一流のカメラマンが撮影し、それを一流のアートディレクションのもと、上質な紙に印刷し、雑誌に仕立てるというものでした。合わせて、その価値がわかる読者にふさわしい文化度の高い読み物も加えて、ハイファッションは送り出されたのでした。価格は、1ドル、今の感覚でいうと5000円くらいだったと思います。

それから、50年、編集長も何度か交代し、ハイファッションというロゴも変遷を重ねてきました。当初は日本人モデルばかりだったのが、ハーフのモデル時代を経て、白人のモデルが中心になって行きました。日本人デザイナーが中心の時代から、海外のブランドやデザイナーもどんどん登場するようになり、ワールドコレクションは、ハイファッションの主要な企画になりました。パリを中心とするコレクションリポートや、時代ごとのスター的存在のデザイナーの特集記事などは、モードの歴史としても読むことができます。そのように、時代に合わせて、ハイファッションは誌面を大きく変えていきました。

それでも、変わらない部分があるとすれば、一つは、ハイファッションは、クリエーターの側に立つ雑誌であり続けたということかと思います。トレンドよりも、デザイナーのクリエーションを評価しようとする姿勢は、どの時代の編集者にも刷り込まれていました。

そしてさらに、ビジュアル作りに対する妥協のなさであり、写真だけでなく、テキストの部分でも質を維持し、ファッションだけに限定せず、他のカルチャーとのつながりを常に求めたところも、ハイファッションらしい点であり、今井田の理念が流れ続けたのだと思われます。

ファッション誌の多くが、部数を上げるために、どんどんカタログ化しても、ハイファッションは最後まで、カタログ雑誌にも、ギャル雑誌にもなりませんでした。それどころか、とりわけ最後の5年間は、Mr.ハイファッションという、これまたハイファッションの理念を、メンズというジャンルで見事実現して、残念ながら2003年に休刊になった雑誌があるのですが、その名物編集長として一世を風靡した田口淑子を2005年から編集長に迎え、メンズファッションもカバーし、バイリンガルにすることで国際性も加えた新しいファッション誌として、独自色はさらに強まったと思っております。文字情報も半端でない量になっていました。

個人的な思いを述べることを許していただけるならば、長らくハイファッションに関わってきましたが、この田口が目を光らせていた時代のハイファッションが、本としての完成度は、最も高かったと自負しております。最後のコムデギャルソン特集、そしてマルタンマルジェラ特集、エルメス特集、ル・コルビュジェ特集、本の特集など、皆さんに改めて見ていただきたい思い出深いものばかりです。ドイツ年に出したベルリン特集では、戦前戦後のベルリンを深く掘り下げ、いちばんよくできたドイツ特集ということで、独日メディア賞をいただきました。

このやや高踏的な姿勢は、部数的には苦戦を強いられることになりましたが、少なからぬ海外のデザイナーからは、世界のファッション雑誌の中でいちばん好きだというお褒めの言葉を幾度となくいただいたことも、今なら自慢させていただいてもいいかなと思います。

もちろん、それぞれの時代に、それぞれ優れた、今なお輝きを失わないページがあり、それを逐一ご紹介することはできませんが、このような稀有な雑誌があったことを、ここにお集りのみなさまの記憶に刻んでいただけると、苦労しながら編集してきたものとしては本望です。最後に、この場をお借りして、ハイファッションのために力を貸してくださった、デザイナー、カメラマン、スタイリスト、ヘアメーク、モデル、モデル事務所、プレス、執筆者ほか、すべての人たちに深くお礼を申し上げたいと思います。それから、赤字にもかかわらず、50年間にわたって、ハイファッションを出し続けてくれた文化出版局にも、感謝の意を表します。いつの日か、時代が好転して、またこういう奇跡を起こそうという編集者が出現することを夢見つつ、受賞のご挨拶に代えさせていただきたいと思います。

Mainichi 01 1983年に創設された毎日ファッション大賞のロゴ 02毎日新聞社主筆で選考委員長である岸井成格 03 受賞の喜びを語るミントデザインズのデザイナー、八木奈央と勝井北斗 04 同じく受賞のことばを述べるAGURI SAGIMORIのデザイナー、鷺森アグリ 05 授賞式後にAGURI SAGIMORIのミニショーが行われた 06 授賞式後のアフターパーティの様子。会場には、多くのファッション関係者が来場した

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