守本勝英=写真、映像
photographs & movie:
Katsuhide Morimoto (S-14),
Tohru Yuasa (B.P.B.)(still life)
上は、出版記念イベント「集まれ!IQ84以下!」のライブ映像。ULTRAFUNCTOR(伊東篤宏+MicroDiet)、CARRE、ジム・オルーク、TAZIOのミュージシャンの演奏に合わせて中原昌也が即興でペインティングを披露。会場は、東京・六本木のスーパー・デラックス。
中原昌也は、音楽家として1990年に暴力温泉芸者という名義でアメリカのインディペンデントレーベルからデビューし、その独創的でアバンギャルドな楽曲は海外の著名な音楽家たちをも魅了。そして、小説家としては2001年に発表した『あらゆる場所に花束が......』(新潮社)で三島由紀夫賞、'06年に『名もなき孤児たちの墓』で野間文芸新人賞を受賞するなど、作家としても注目を集めている。それらの活動の他に、中原には画家としての一面もある。その多くは、彼のCDのジャケットや本のカバーなどで確認することができるが、特徴は、多彩な色使いと、ユーモアを含んだどことなく暴力的なニュアンスだ。そんな中原が初の画集『IQ84以下!』を刊行した。100枚の絵からなるその本は、製作期間約一ヶ月ということをまったく感じさせない魅惑的な一冊だ。出版に至った経緯、制作秘話など、中原に話を聞いた。出版記念イベント「集まれ!IQ84以下!」の模様と合わせて紹介する。
『IQ84以下!』のカバーと中ページ。
1. 『IQ84以下!』誕生秘話。「いい加減なものにしたかった」
- ——
- 『IQ84以下!』は、どのような経緯でフィルムアート社から刊行されたのでしょうか。
- 中原昌也(以下N)
- 以前から、フィルムアート社から本を出さないかという話はあったんですが、お金が安いんで、楽に作れる本を出そうと企画して(笑)。最初は、僕が喋ったものをまとめた本にしようって言ってたんだけど、企画が進むにつれて、それじゃダメだと。それで結局、僕が100枚の絵を描くことになりました。
- ——
- 絵だけではなく、本の中には短編小説や、初版限定CDまでついていますね。
- N:
- この本の価格設定が高いから文章やCDまでつけた方がいいってことになって...。
- ——
- プレスリリースには、100枚の絵、短編小説、音楽をわずか一ヶ月の制作期間で仕上げたと書いてありますが、実際はどうだったのでしょうか。
- N:
- 本当は、一ヶ月以内ですね。三週間ぐらい。
- ——
- 一ヶ月以内に絵を描いて、小説まで書いている訳だから、実際20日間ぐらいで絵を書き上げたのではないですか。20日間で100枚!
- N:
- さらに小説は、入校の二週間ぐらい前に突然、書いてほしいと頼みこまれて、もうしょうがなく。その分のお金をすぐくれるというので、二日で30枚書き上げたんです。本当は小説なんて入れるつもりはなかったんです。いかに執筆以外のことで頑張っているか証明しようと思っていたのに、小説まで書かされて、あらゆることに頑張る人みたいになってしまった。自分が自己顕示欲の固まりみたいで、すごく恥ずかしい。すべては文字を書かないために始まったのに、馬鹿みたいですね。
- ——
- 絵だけでもストーリーが感じられますが、小説の内容とは、あまり結びつかない印象を受けました。
- N:
- 文章は後でつけたものだから意味を見つけてくれっていう気もまったくないです。
- ——
- 一枚の絵はどれくらいの大きさですか。また、描く道具は何を使ったのでしょうか。
- N:
- 用紙は、A4サイズで画用紙を使いました。道具は、いろいろですけど、ほとんどサインペンですね。
- ——
- 本のタイトルには少し驚きました。
- N:
- IQ84って普通なんですよ。頭が悪いわけではない。まあ、実際に村上(春樹)さんの本は読んではいないんですけど。
- ——
- 初版限定CDの内容は、中原さんが近年、作っているようなノイズミュージックなのでしょうか。
- N:
- まあそうですね。この前、飲み屋でこのCDを聞いたら聴くに耐えなくてぞっとしました。もうちょっとできたはずだと思いましたけど、緊急出版ですからしょうがないですね。
- ——
- 絵と音楽の雰囲気はリンクしているように感じます。
- N:
- そうですか。そうなっちゃいかんと思っていたんですけど。本当はどこかいい加減なものにしたかったんです。今っていい加減なものなんてほとんどないし、後々、誰かが古本屋でこの本を見た時に、コレって何なんだっていう衝撃を与えたいですね。時間を切り離してポッとこれがあったときに、見た人が一体これは何なんだって附に落ちない感じになったらいいなと思います。
- ——
- 絵を描く時に、映画や音楽などからインスパイアされたりしますか。
- N:
- 敢えてそうしないように気をつけました。ただ一カ所、セシル・テイラーのアルバムのジャケットをパロディにしてしまったところはあります。たまたまCDを持ってただけで、特に意味はないです。後半、描くものがあまりにもなかったんで真似してみたんです。特別好きなわけではないんですけど。
- ——
- 特に何かをイメージして描いているわけではないんですね。
- N:
- 特にないですね。好きなものと言えば、実はグラビアアイドルの顔は真似して描いてみたんですが、不細工にしか描けなくて。本人にしてみたら迷惑ですよね。人の顔は、極力描きたくなかったんです。描かずに通そうと思っていたんですけど、意図的にそうしていると思われるのもいやで、後半になって人の顔を描きました。
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- 9月末にboidからライブ版のCD「Live : Album」を出されますね。
- N:
- 本当は、なるべくちゃんとしていないものを出したいんです。今、海外では、カセットやLPのアナログなものが再び盛り上がっているようです。余裕があれば僕もカセットやアナログで作りたいですね。今、こういう時代だから自分勝手なことをする人は、日本では割に合わない感じになっているけど、海外のようにまだのびのびできる余地がある方が正しいのか、それとも下らないことが徹底的に価値のないこととされるのか、一概には何とも言えないですけど。少なくともそういう時代に生きてしまったから、それをやるしかないわけです。今のように、すべてが合理的な経済活動の上に成り立っていることって、本当に下らないと思う。それだけを信じて生きている若い人はかわいそうだと思います。他人と切り離して勝手なことをやればいいのに。この本は、そういう人たちにも響いてほしい。自分勝手なことをやって、どうせ売れないだろって思われて、後ろ指さされて終わりかもしれないけど。
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- 家の近所のCD・レコードショップ(トラスムンド)に行くと、ミュージシャンが自分たちで一枚一枚作った自己流通のCD-Rがたくさん並んでいます。大手の量販店に並ぶようなものと違って、このようなマイナーな作品もすばらしいですよね。
- N:
- 遠目で見るといっぱいCDが並んでいると思うんだけど、近くで見ると知り合いが作ったCD-Rばっかり(笑)。他人の音源を勝手に使ったミックスCDとか、そんなものばかりだけど、そういったものはすごく健全な感じがしますよ。
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- ほとんどが1000円で、安いと500円で売ってますしね。
- N:
- 僕だけ1,800円っていう高い値段で売ってる。金の亡者と言われてもしょうがない(笑)。でもこういったことが本当に追いやられてますね。