Designer
Jun Takahashi
高橋盾
direction&styling: Jun Takahashi
photographs: Katsuhide Morimoto(S-14)
art work: Enzo
makeup&hair: Katsuya Kamo(Mod's Hair)
model: Rico,Jun Takahashi
2010-2011 秋冬パリファッションウィーク期間中に、写真展と服の展示という形でコレクションを発表したアンダーカバー。今回は、メンズのアンダーカバイズムも同時の発表となった。コレクションタイトルは,「Avakareta Life」(暴かれた生活)。レディース25ルック、メンズ27ルックよりなるコレクションは、日常着がテーマで、Tシャツ、ニット、ワンピース、デニム、ジャケット、コートなどのリアルクローズが、日常の一コマの中に置かれて撮影されている。着るのは、高橋盾自身と、妻の璃子。高橋自身の住居と公園、スーパーマーケット、街路などをあらかじめ撮影し、それをプロジェクターで映し出した前にモデルが立つというトリッキーな写真が、リアルでありつつ、リアルを越えたおもしろい演出となっている。
DESIGNER INTERVIEW

photograph : Tohru Yuasa(B.P.B.)
- ——
- 今回このような形でのプレゼンテーションになったのは、どういう経緯があったのですか?
- 高橋盾(以下T)
- 東京、パリと、ショーという形で表現してきましたが、ショーとなると、どうしてもショー映えとかトータルコーディネート、つまりルックを強く見せたいという発想が強くなります。ショーでのインパクトというか。去年のフィレンツェのメンズのショーでも、テーマは違うにしても、やっていることは一緒。で、ショーで見せたルックがそのまま街に出た時にどうなるかと言うと、ちょっと異様な感じだと思うんですよ。ショーで良く見せるために、色を合わせ過ぎていたり。そのルックをショップスタッフが着て、ショップにいる間はいいけど、そのまま外に出たらやっぱり異様。そういうものをずっと作ってきていたんだなと改めて考えるようになって。自分の服や、スタッフの服を見ても、そのまま(ショールック)の格好の人はいない。じゃあ、もっと現実的に、ほんとうの普段着というものをうちの作り方で作ってみようと。あまり着飾るとかそういうことではなくて。これがまずコンセプトです。デザインを進めて、次に見せ方をどうしようかということになって、色々考えた結果、リアルな洋服を作っても、それを外人モデルに着せると、コーディネートがリアルでも、結局違う見え方になってしまう。だったら、自分で着た方が面白いのかなと。レディスはうちの奥さんが着れば、よりリアルで。そういうところに最終的に落ち着いたのですが、正直、最初から考えていたわけではなくて、自分が出るなんて考えてなかったんですよ。
- ——
- どっちかと言うと、ご自分が出るのは、お嫌いですよね?
- T:
- 嫌いですよ。だけど、今回の場合は出た方が面白さが出る。面白さというのも、最近大事なポイントなんですよ。
- ——
- かなり面白いですね。
- T:
- シリアスな方向じゃなくて、ユーモアな部分を出したい。それには自分が出ることが一番じゃないかと思って。
- ——
- 怪しい感じ。
- T:
- 怪しいです(笑)。
- ——
- アイデアは守本勝英さんと?
- T:
- そう、モーリと考えて。
- ——
- 『グレース』の写真集を彷彿させるような。
- T:
- そうですね。日常を覗き見るみたいな。まさに「Avakareta Life」(あばかれた日常)です。
洋服としては、テーマは日常服なんです。自分が素直に着たいものを作る。今までは、それに、コンセプチュアルなテーマをプラスしていたのですが、それが逆に日常に行くことを邪魔している部分があったんです。でも、今回はとことん、普段着るということを前提にして、みんなが着たいものを作りました。なので、すごくウケはいいです。展示会も評判よかったし。キメキメなものじゃくて、みんなが一点ずつ手に取って、「あっ、これ着れるね」という感じ。いつもだったら、どこか躊躇するような過剰にデザインしているところがあったりしたんですけど、それはなるべく控えようと。
- ——
- そういう意味では、前回のディーター・ラムスの流れをくんでいる?
- T:
- その意識は強いですね。
- ——
- 前回は、デザインしないことがデザインとおっしゃっていましたよね。
- T:
- そう、そして今回はそのコンセプトを日常服の目線で作っていきましたね。デザインをなるべく押さえて、シンプルに。特にレディスに関しては、パターンの数を少なくしました。
- ——
- パターンの数が少ないというと?
- T:
- 例えば、通常最低でもパターンが8枚にはなるジャケットですが、3〜4枚での作りになっています。普通に見えますが、無駄を省いた作りになっています。そして、メンズ、レディスの境がないですね。あんまりパキっとライン分けしたデザインに興味がなくなってきちゃって。
- ——
- 前回もそんなことをおっしゃっていました。
- T:
- はい、ショーをやめた時から、ショーというしばりがなくなったんで。さっきも言ったようにキャットウォークだと、強さとか、そこでのインパクトを重視しちゃうんだけど、現状そういのが必要ないから。色合いや形も、リアルにうちのカラーを出せるようになった。見たことのないものを特別に作ろうとか、どうでもいいかなと。大分考え方がゆるくなっていますね。斬新でパンクで、とかいうことより、地に足がついた面白さというか。
- ——
- その方が今や斬新かもしれませんよ。
- T:
- 本当そう思いますね。みんながパリでショーをやってるのを見ると、異様に感じますね。昔からうすうす思ってたんですけど。パリコレクションでショーを見に来ている人たちを見て帰ってくると、まるで別世界だったなと感じるわけですよ。業界の有名人と会って、色々と話をするんだけど。自分たちの生きている世界がリアルな環境なんで、どこか違和感を感じますね。だったら、自分のフィールドにバックしていった方が、肩の力抜いて服作れるんじゃないかなと。色んな試みは散々やってきましたから、そういうのは別の人に任せて、自分はもうちょっと面白い服とか面白い発表の仕方だったりとか、自分にしかできない他のことをやろうかなと今は思っています。これも(今回のルックブックを指して)なかなか普通じゃできない。
- ——
- これはできないでしょ。自作自演は。場所はご自宅ですか。この偽物っぽい感じはシンディ・シャーマンを思わせるような。
- T:
- そうそう一応シンディの作品を見ましたね。だけどちょっと違う感じでやりたいなと。
- ——
- 自分のフィールドにバックするっておっしゃいましたが、つまりこれが東京のリアリティということなんですか?
- T:
- そうですね。東京であり、日本であり、自分の周りであり。まあ、自分です、自分。東京の今を拾っているわけではないんで。あくまでも個人的です。
- ——
- パリでの評判はどうでしたか?分かってもらえました?
- T:
- 今イチ分かってないかなあ、正直。でも、昔からの友人はこのコンセプトをすごく理解してくれて喜んでくれた。これが一番のポイントかな。オーストラリアの友人に、「パリで案の定反応悪いんだよね」って言うと、「それすごくいいサインだね」って。なので、自分的には、パリの反応は成功だなって。パリで発表はしてるんだけど、そこに集まる人達のために作っていないというか。ちょっと違う、上とか下じゃなくて、別次元でやっている。
- ——
- パリでもアーティストなどは分かるでしょう。
- T:
- うん、分かる分かる。ファッションだけ見に来ている人には、多分違うと思う。確かにショーも悪くはないんだけど、俺はもう興味ゼロで。その考え方自体、完全に自分の中にないんで。ショーという目線で見ちゃうと、今回のコレクションは全然違うものですよね。今だに、ショーがいいと思っている人もいるわけだけど、俺の中ではショーというパフォーマンスに全く新鮮味がないと言うか。
- ——
- ショーの時には、音楽へのこだわりも人一倍でしたが、今回展示会場では、音楽は流していたんですか?
- T:
- ヒッチコックの音を流していましたよ。「鳥」っぽいビジュアルもあるし、日常の雰囲気を出すためには、ヒッチコックぐらいが面白いかなと。
- ——
- 今回素材的にはどうですか?やはり新素材などを使っているんですか?
- T:
- 実は、使いたかったハイテク素材が廃版になっていたりして。体温をキープするカプセルとか。需要がないらしい。でも、そこそこ機能ものを使ってますけど。裏地にニットを持って来たりとか、細かいことはやっています。特別この生地という打ち出しはないですね。そこに重点を置いていないですよ。今まで見たことないスナップボタンとか、付属品は、意外と新しくて面白いもの使っています。
- ——
- アンダーカバーを好きな人、着る人にとっては、このシリーズの洋服があれば、ほとんどのシーンに対応できるということでしょうか?
- T:
- そうですね。あと面白いのは、日常の道具をアクセサリーにしたところ。スーパーの袋も実はナイロンで出来ていて、これも商品なんです。旅行鞄も中綿入りでふにゃふにゃに出来ていたり、新聞紙のように見えるのもバッグなんです。日用品を使って新しいものを作ってみました。全体は引き続きアウトドア系ですが。シューズには意味のない化学記号がプリントされていたりしています。
なお、シーズンカタログの巻頭には、「逆走の心理」(The Mentality of Reverse Running)と題された高橋盾による小文がついていた。それを、最後に全文転載する。
逆走の心理
セレブリティーやごく一部のファッションピープルの為だけに向けられる今のプレタポルテのファッションショー。ファッションショーの為だけに提案されたような、現実味の無いコーディネイトや過剰なデザインばかりがファッションマガジンを通して世の中にアピールされている。そのPRの為、大企業に多額の広告費が流れている。そして一方、ファストファッションと呼ばれる、超大量生産型、低価格のシステムが一般のトレンドと化している。果たしてこのファストファッションに作り手の情熱というものが存在するのだろうか?人々はTVや大金をつぎ込んだ広告にまんまと乗せられ、続々と開店するその店舗に長蛇の列をなす。この両者に通じるマネー至上主義の今のファッション。全てはお金に基づいたシステムの上に成り立っている。私たちUNDER COVERはこうした現実味が薄い今のモードや情熱が感じられないファストファッションに異議を申し立てる。ファッションとは何なのか、デザインとは何なのか?そして私たちが目指すのは「日常」を意識したファッション。決して着飾らず、肩の力を抜いたデザインとコーディネイト。しかし、決して何もないデザインではなく、きちんとしたデザインが成されている服。洋服一つ一つに愛情と情熱を注ぎ込んで完成させる私たちのスタイル。無駄の少ない服のパターンや縫製方法や生産システム。ほんの少しずつでも、そうした現実味と暖かみ溢れる心のこもったデザインが世の中に広まって行く事を願って止まない。今回のコレクションは前回のテーマ"Less but Better"に引き続き、無駄のない物作りを基本理念に、日常の生活に基づいたデザインをUNDER COVER独自のデザインで表現している。