10月某日。
この俳優が出ているのであれば、間違いないんじゃなかろうか
そう思える2人の俳優が共演する映画と知って、期待を膨らませて試写へ。
イラク戦争の裏で、ある真実を伝えようとしてホワイトハウスから目をつけられてしまう男性と、
その妻で、夫とともにキャリアをつぶされてしまう元CIAの女性。
ナオミ・ワッツとショーン・ペンがその夫婦を演じている。
映画好きな方なら、このキャスティングに興味を持たれるはずだろう。
(C)2010 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
映画は大変緊迫感に満ちた内容だ。なにしろ実話に基づいている。
観客は主人公とともに、なにものかの都合によって、
始まる必要の無いイラク戦争が開戦する悪夢を目の当たりにする。
試写当日。
たまたま立ち寄った書店で私は『リスクの誘惑』(慶應義塾大学出版会)という書籍を手にしていた。
世界はいつからか「リスク」という仮想現実をシュミレーションしながら構築されている。
『リスクの誘惑』第2章、巽孝之氏の論考「カタストロフィリア」にたまたま「フェア・ゲーム」という言葉が出ていた。
ハーマン・メルヴィル『白鯨』に出てくる白鯨に復讐を誓うエイハブ船長のセリフの引用。
この世にはフェア・プレイが成り立つ、という船長のセリフは「旧約聖書の『嫉妬する神』の理念に則した復讐の正当化が試みられて」いること。
復讐の正当化。
「9.11」の"復讐"を虎視眈眈と進めるイラク戦争勃発前のアメリカが舞台。
権力側にとって不都合な存在となってしまった、ある夫婦。
危険をかえりみず、言葉で権力と戦おうとする夫。
CIAというキャリアから黙秘を続ける妻。
家庭を守ろうとする同じ志のふたりの感情がすれ違い始める。
映画は、「正義」に翻弄されるふたりの、或いはある家族の危機を通して、
世界のどこかで起きている国家レベルのマクロな悲劇がもれなく同時に
ミクロサイズの悲劇を世界中で引き起こしていることを描こうとする。
そして私たちの感情に訴えるのは、国家レベルのダイナミックな危機ではなく、
ささやかな各個人レベルの幸せであること。
危機の本質は、同じなのだ。復讐の、それも。
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「正義」とともに「言葉」にも振り回されていくふたり。
これは、この映画の主人公たちに限られた問題ではない筈。
テレビで流れるニュースを、常に懐疑的に眺めるようになったのはいつからだろう。
何が正しい情報なのか。それとも正しいことなんてひとつも無い世界なのだろうか。
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「言葉」をきっかけにすべてが崩れていくふたりの環境、関係。
大きな権力を前になす術が無い状況で
ショーン・ペン演じるジョー・ウィルソンが、黙ることを選択し続ける妻・ヴァレリーに
それでも自分たちが武器にできるのは「言葉しかない」ことを叫ぶシーンが印象的だった。
ジョーは若者を中心に、この未曽有の個人的・国際的危機が
他人事ではない民主主義の危機でもあることを訴え、世論が動いていく。
ふたりはどう「復讐」と「危機」に向き合い、受け入れ、乗り越えていくのか。
問題のない人生なんて無いわけで、問題のない国家なんてないわけで、
いろいろと考えさせられる。
五月雨に感想を書いてしまったけれど
ハリウッドらしいスケールの大きい見ごたえのある映画である一方、
ドキュメンタリータッチのカメラワークや編集が、少しだけエンタメムービーと趣を異ならせています。
そしてしつこいようですが、ナオミ・ワッツとショーン・ペン。
このふたりだったから尚更、満足度の高い映画でした。
10/29(土)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国公開
オフィシャルHP: fairgame.jp
コピーライト:© 2010 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
配給:ファントム・フィルム/ポニーキャニオン