世界のデニムをリードするメード イン ジャパンの魅力

『装苑』2008年5月号 付録
photographs : Josui(B.P.B.)
  • 世界のデニムをリードするメード イン ジャパンの魅力
  • Artistic Integrallty Denim カタログ

ファッションスタディ 装苑アーカイブ denim

ファッションスタディ 装苑アーカイブ denim

ファッションスタディ 装苑アーカイブ denim

この空間で1日に400本ほどのジーンズやワークパンツを生産する パーツごとに分業する工場が多い中、ここでは裁断縫製を一貫して行なっているため、ハイクオリティな製品の大量生産を可能にしている

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右 ブランドやメーカーで作られたパターンは、工場のパタンナーによって工業用のパターンに直す。複雑なパターンが今や主流のジーンズ業界だが、 “ AI ” に関してはすべてごくシンプルな5ポケットのパターンだそう。
左 ボタンとリベットは伊勢丹オリジナルの別注。シルバーメッキで繊細なニュアンスを出している。

ファッションスタディ 装苑アーカイブ denim

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1969年創業の美希刺繍工芸は、生地をカットしながら刺繍も入れられる特別な技法を得意とする。
写真右 代表取締役社長の苗代次郎さん。特殊な刺繍は、この人の手で作られる

ファッションスタディ 装苑アーカイブ denim

かぎ針が導入された特殊な機械は、1台につきジーンズ8本分の刺繍を入れることができる最新式。
1分間に700回転、700針の刺繍が入る様子は圧巻。 しかしここでも人の手で設置したり機械を操縦しないと、優れたものはでき上がらない。

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隠しリベットを施したバックポケット。
刺繍とのバランスも考え、すっきりしたステッチが特徴。
そして従来よりもセンター寄りに配置しているのでヒップアップ効果もある。刺繍が入るモデルはAI 001AI 002AI 003AI 009の4種類。

ファッションスタディ 装苑アーカイブ denim

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右 巨大脱水機から 出されたジーンズたち。
左 染め方によって形やサイズを変えるため、ここには様々な石がある。

ファッションスタディ 装苑アーカイブ denim

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5本の指を巧みに動かして、はいたときに生じる立体的なしわ(立体ヒゲ)を作る。
リアリティのあるハンドメード感を得意とする備南染工だからこそ、はきこんだような味のあるしわが出せる。左の写真の立体ヒゲは従来の手法。 “ AI ” は特別な手法(企業秘密)で女性らしい曲線的な立体ヒゲを施している。

ファッションスタディ 装苑アーカイブ denim

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児島にある美東は様々な手法で色落ち加工を施す工場。その一つ、ブラスト加工は、窓もない遮断された空間で行なわれ、高圧な砂をジーンズに吹きかけて色を削り落としていく。砂ぼこりで視界がぼやける中、完全防備で黙々と加工を施していく様はまさに職人。 この作業があるからこそ、こだわりのあるジーンズが誕生する。

ファッションスタディ 装苑アーカイブ denim

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右 しわの入った板状の型をジーンズの中に入れ、上からヤスリもしくは専用の機械でこすっていく作業をシェービングという。ここではほかの工場よりも若者が多く、男性に混じって女性も何人かいる。
左 シェービングを数分しただけで、何か月かはかないと出てこない立体的な表情が完成する。絶妙な色の濃淡、手だからこそ表現できる職人技だ。

ファッションスタディ 装苑アーカイブ denim

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高速回転する専用の機械で、はき古して生地がほつれている感じを表現していく。「機械を持つ右手の力を加減しながら、ダメージの強弱をつけて生地に微妙なニュアンスを作っていきます」簡単そうに見えるが、同じことを素人がやると、ぽっかり穴を空けてしまうとか。「とりあえず半人前になるまで半年はかかりますね」

※登場されます方々のお名前は、2008年5月号時点のものです。



この春、伊勢丹初のオリジナルジーンズ “ AI ” がデビューした。いろいろな魅力を盛り込んだ革新的なジーンズは、デニムの街で知られる岡山県の児島と広島県の福山で作られてい:る。たくさんの人の手と機械の融合によって、世界に誇るデニムが生まれる場所。なぜ日本のデニムがすばらしいのか。 “ AI ” の制作現場を追いながら探ってみる。

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伊勢丹初のオリジナルデニムブランド “ AI ” は“ Artistic Integrality Denims ”の略語。レザーパッチの代りにブランド名の刺繍を入れている様子は、ジーンズに命を吹き込んでいる瞬間でもあるよう。(美希刺繍工芸)

伊勢丹初のオリジナルジーンズ

世界中から厳選してきた旬のジーンズを発信する伊勢丹新宿店の「ヤングスポーツウェア ジーンズ」。およそ国内外35ブランドのジーンズを常備し、1日200本、年間8万本を売り上げ、デニム業界に影響を与える話題のコーナーだ。ここでバイヤーを担当する櫻井俊晴さんは、今までに様 々なイベントや限定コラボジーンズを提案し大成功を収めている。そしてこの春、新たな提案として伊勢丹初のオリジナルデニムブランド “ AI ” を発表した。

いろいろなジーンズをはいてきた本物、本質を知る大人の女性に向けて作ったと櫻井さんは話す。「トレンドはもちろん、自分に合ったシルエット、サイズ、はき心地、どんなシーンにも合うデザイン、手ごろな価格。それらすべてに当てはまるデニムを提案したい。約8年続くデニムブームに新風を吹きこめないかと。そんなときに、ブランドのディレクションを行なうトラップ・クリエイティブ・オフィスの大柿肇さんより、自分と同じ思いを持ったかたがたをご紹介いただく機会があり、実現したのが "AI"です」

エキスパートが手がける女性のためのジーンズは全9種類!

ブランド名“ AI ”は“ Artistic Integrality Denims ”の略語でエーアイと読む。芸術性も備え、世界トップレベルを誇る日本の技を加えた完全なるデニムという意味が込められるほか、インディゴの藍、伊勢丹のlも隠されている。このプロジェクトにかかわったのは6名。販売元である伊勢丹新宿店「ヤングスポーツウェア ジーンズ」バイヤーの櫻井俊晴さんをはじめ、ディレクターとデザイナーを務めるトラップ・クリエイティブ・オフィスの大柿肇さんと山本剛史さん、縫製・裁断を手がける加富屋の後藤伸二さん、加工を担当するフーバルの石橋秀次さん、素材にかかわるセルジュの中谷一夫さん。それぞれが専門分野で国内外に活躍するエキスパートだ。ふだんは名を伏せて裏方に徹する彼らだが、 “ AI ” に関してはデニムを通じて日本の技術や工場のすばらしさを伝えるため、チームとなって表に名を出している。一般に分業制で、なおかつ異なる職種同士での深い交流を持たないアパレルの世界で、上下のないチーム制の関係は珍しいことだそう。
またさらに珍しいのが、素材のセレクトや最終サンプルチェックまで伊勢丹新宿店「ヤングスポーツウェア ジーンズ」の女性販売員が参加していること。お客様にじかに接する販売員は誰よりも世の女性が欲しいジーンズを知っている。ある意味、 “ AI ” は欲しいものと作りたいものが合致した理想のジーンズかもしれない。

“ AI ” から見る福山と児島のデニム事情

ファッションスタディ 装苑アーカイブ denim

世界にまだ数台しかない最新の裁断機。パターンを機械に読み込ませてデータ化し、レーザーで大量にカットしていく。その速さ、手作業のおよそ80〜100倍!1960年創業の加富屋は裁断機をはじめ最新機器を積極的に導入し、それを熟練されたオペレーターが操縦する。オペレーターも縫製工も、一人前になるには最低でも5年はかかるそう。(加富屋)

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児島にある美東は様々な手法で色落ち加工を施す工場。その一つ、ブラスト加工は、窓もない遮断された空間で行なわれ、高圧な砂をジーンズに吹きかけて色を削り落としていく。砂ぼこりで視界がぼやける中、完全防備で黙々と加工を施していく様はまさに職人。この作業があるからこそ、こだわりのあるジーンズが誕生する。(美東)

ファッションスタディ 装苑アーカイブ denim

デニム加工をメインとする備南染工の機械はすべて手動。職人の手がジーンズの仕上りを決める。現場は熱湯を使うため、夏は蒸し風呂状態で苛酷とか。(備南染工)

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児島発祥といわれるストーンウォッシュ加工。天然石と人工石をブレンドし、ドラム缶のような機械にジーンズと一緒に放り込み、90度のお湯で洗う。石にもまれることで、生地に独特の風合いと柔らかさが出る。(備南染工)

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女性スタッフの手を拝見。1週間シェービングを続けると、白の手袋が真っ青に! 感覚がにぶるからといって手袋をはめない人もいるそう。(美東)

全体のキーワードは “ 女性らしさ ” 。それをベースに9種類のジーンズをデザインした。素材は放熱性、ストレッチ、テンセルの入ったオリジナルを3種類開発。それぞれの素材の経糸に染色性がよく、しなやかな肌触りのオーストラリア綿を使用し、自然な色落ちが出るよう工夫している。5ポケットの形を基本としたシンプルなフォルム。ヒップアップ効果のある小さめのバックポケット、シャープさと繊細さを表わしたステッチ、きれいめに施したダメージ加工など、細部にさり気ないこだわりを取り入れているのが特徴だ。
機械と人との融合がなければ世界に通じるジーンズが生まれないと、裁断・縫製、刺繍、加工の現場を見て実感。広島県福山にある加富屋では、工業用に直したパターンを最新機器でデータ化し、レーザーカットした生地を職人が縫製していく。すべての作業を一貫して行なうため、短時間で高品質の大量生産が可能に。徹底したシステム管理があるからこそ、 “ AI ” の手ごろな価格が実現した。モデルナンバー、001002003009に施したパッチ代りの刺繍を手がけた美希刺繍工芸は広島県福山にある老舗の工場。ここは最新の刺繍機を完備。けれども仕上りを決める針は、社長の苗代次郎さんしか調整できない。加工に関しては、岡山県児島にある備南染工と美東が、機械と手の連携作業によってジーンズに1本ずつ施していく。微妙なニュアンスは職人の熟練した技術と、繊細な力加減によって表現される。
 どの工場も大手に比べると規模は小さい。しかし職人と機械の連携作業を熱心に追求しているからこそ、少量生産でも大手では実現できないこだわりのジーンズが誕生する。加工デニムがなぜ高価なのか、その理由が理解できると同時に、 “ AI ” の本質を垣間見ることができる。

日本人の感性で作るニュースタンダードデニム

戦後、制服やワークウェアを作る街として栄えた福山と児島。その後デニムに移行し、ストーンウォッシュを開発したことで街の名が広まり、ケミカルウォッシュやビンテージブームをきっかけに、デニムが地場産業として確立。多くのデニム好きが集まり熱心に研究を重ねた結果、世界から注目されるデニムが生まれた。日本人の勤勉さと繊細さが世界のデニムを作ったのでは? と"AI"チームの全員が推測する。そして、「お客様のニーズに合わせて、作り手と売り手が同じ気持ちで作った “ AI ” は、今までの日本のデニムにはないもの。これが新しいスタンダードになってくれたらうれしいです」

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