20世紀モードとシルエットの変遷 1900-2000

『装苑』2007年10月号
横田尚美=文 中川清美=イラストレーション
  • ファッションスタディ 装苑アーカイブ 1900, 1910-1920, 1930
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ファッションスタディ 装苑アーカイブ 1900

ファッションスタディ 装苑アーカイブ Worth

一世紀ほど前の女性は、それ以前と比べれば様々なスポーツを楽しんだり旅行をしたりと、格段に活動範囲が広がっていた。しかし相変わらずというよりは技術革新の進むコルセットで、胸からウエスト、腰までを締め付けていた。かつてないほど女性の生活と服装が乖離していたので、女性が楽な服を求めるのは歴史の必然だった。そんな中ほぼ100年前の1906年、「モードの帝王」ポール・ポワレが、オートクチュール・デザイナーで初めてコルセットを使用しないデザインのドレス「ローラ・モンテス」を発表する。マリアノ・フォルチュニイがイタリアでより現代的なドレス「デルフォス」を発表するのは、この翌年だ。1910年代にかけて日本やアラビアの民族服、古代ギリシア・ローマの服、そのリヴァイヴァルであるナポレオンの時代のドレスのアイディアを取り入れた、ウエストにポイントを置かないデザインが流行する。

ファッションスタディ 装苑アーカイブ Worth

ウォルト
イブニングドレス 1890年代
文化学園服飾博物館蔵
ドレスは、2代目の作品。初代のシャルル・フレデリック・ウォルトは、1857年にパリにメゾンを開設し、現在のオートクチュールの基礎をつくる。王室、貴族階級の女性を顧客とし、モード界に君臨。装飾に凝るのではなく、ふんだんに使った豪華なリヨン製絹織物を生かす作品で有名だった。

ファッションスタディ 装苑アーカイブ 1910

ファッションスタディ 装苑アーカイブ PAUL POIRET

1914年、ヨーロッパ全体を巻き込んで第一次世界大戦が勃発する。ガブリエル・シャネルは、働かざるを得なくなった女性が望んだソフトなスーツとブラウスで人気を得た。大戦が終わった1918年ごろ、マドレーヌ・ヴィオネは幾何学形でからだに沿わない画期的な服をデザインする。女性も機能的でシンプルな服を求めており、1920年代に入るころには、女性服は全くウエストを締め付けない、からだに自然で楽な形が当たり前となっていた。1925年ごろにはスカート丈も膝丈になる。ドレスの形は長方形で、この時代に流行するアール・デコ様式は幾何学的・直線的デザイン。色もともに黒が多く、いずれもモダンな印象だ。

マリアノ・フォルチュニイ
ドレス 1910-1920年代
文化学園服飾博物館蔵
ドレスは、「デルフォス」。マリアノ・フォルチュニイは、スペイン生れ。後にベネチアに住み、中世、ルネッサンス、日本、東洋をイメージしたステンシルプリントと、それを使用した服の製作を開始。1907年ごろからは古代ギリシア風の絹の細かいプリーツドレス「デルフォス」を製作。斬新なボディコンシャスのフォルムは、20世紀のファッションの動向を予知させた。

ファッションスタディ 装苑アーカイブ マリアノ・フォルチュニイ
ファッションスタディ 装苑アーカイブ ポール・ポワレ

ポール・ポワレ
ガーデンパーティドレス 1911年
島根県立石見美術館蔵
ドレスは、ハイウエストでソフトなストレートライン。当時の流行のシルエットだった。ポール・ポワレは、1903年メゾン開設。1906年にはコルセットなしのドレスを発表、20世紀モードの新しい方向性を打ち出す。日本やロシア・バレエなど東方の影響を受け、キモノ風コート、ホブルドレス、ランプシェードスタイルなどオリエンタルファッションを次々と発表。
http://www.grandtoit.jp/

ファッションスタディ 装苑アーカイブ 1920

ファッションスタディ 装苑アーカイブ PAUL POIRET

シャネル
イブニングドレス 1925年ごろ
文化学園服飾博物館蔵
直線的でシンプルなシルエットに、スパングルや刺繍が美しく映えるドレス。ガブリエル・シャネルは、1909年に帽子のデザインを始め、1910年にパリ・カンボン通りにメゾン設立、婦人服へ進出。下着素材のジャージーや男子服に着目し、第一次世界大戦後の新しい女性像を明確にとらえたシンプルで機能的なスタイルを打ち出した。シャネルのスーツは20世紀の定番となった。

ファッションスタディ 装苑アーカイブ イブニングドレス
ファッションスタディ 装苑アーカイブ ドレス

ジャン・パトゥ
イブニングドレス 1923年ごろ
文化学園服飾博物館蔵
1920年代に台頭した機能的で直線的な芸術様式「アール・デコ」からの影響を強く受けたドレス。細長くシェープレスなローウエストのシルエットが中心。

ファッションスタディ 装苑アーカイブ 1930

ファッションスタディ 装苑アーカイブ Chanel

1920年代後半には女性らしいラインが戻り、スカート丈も少し長くなっていた。1929年に世界大恐慌が起きると世の中が保守的な雰囲気になり、1930年代にはますます女性らしさが好まれた。ただし、それはフリルやボー、フレアなどで表現され、デイドレスは基本的には1920年代と大きく変わるものではない。イブニングドレスは、布地を斜めに使うバイアスカットによる、からだに吸い付くような細長いシルエットが流行した。バックレスや薄く柔らかな布を重ねる手法も、女らしさを表現するデザインとして人気だった。バイアスカットを発明したといわれるヴィオネ、この時代も人気のシャネル、そしてシュルレアリストのダリらとコラボレーションして、ファッションデザインにアートのおもしろさを持ち込んだエルザ・スキャパレリといった女性デザイナーに加え、スポーツウェアの得意なジャン・パトゥらが活躍していた。

ジャン・パトゥ
イブニングドレス
左 1932年、右 1933年ごろ
文化学園服飾博物館蔵
バイアスカットで仕立てられたドレス。右は同じ生地の表裏の艶の違いを使い分けているのがデザインの特徴。左は、1930年代のイブニングドレスの特徴である背中にポイントのあるデザイン。ジャン・パトゥは、1910年に毛皮と婦人服の店を開く。1912年には紳士服に進出、略礼装が米国で爆発的人気となる。第一次世界大戦後、メゾン開設。1920年代はスポーティで活動的な女性のための作品で人気を博す。シンプルだが高級感のある作風。

ファッションスタディ 装苑アーカイブ イブニングドレス
ファッションスタディ 装苑アーカイブ イブニングドレス

作者不明
デイドレス 1933-1935年ごろ
文化学園服飾博物館蔵
細長いシルエット、長めのスカート、ナチュラルウエストのドレス。フリルやフレアのフェミニンなデザイン。

エルザ・スキャパレリ
イブニングドレス 「サーカス・コレクション」 1938年
島根県立石見美術館蔵
シンボルカラーのショッキングピンクを用いたフェミニンなドレスは、全面にサーカスからイメージを広げたモチーフをプリント。テキスタイルは、シュルレアリスムの画家の一人であるマルセル・ヴェルテスによるもの。エルザ・スキャパレリは、イタリア生れ。パリに住み、1927年トロンプルイユのセーターで成功し、スポーツ服からオートクチュール界に入る。ダリらシュルレアリスムの芸術家と交流を持ち、アートとファッションの融合を図り、機知に富んだデザインで知られる、1930年代を代表するデザイナー。
http://www.grandtoit.jp/

ファッションスタディ 装苑アーカイブ イブニングドレス
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